逢魔時のシャドー 【夕暮れの川景色。】 夕方の散歩で、愛犬が 西陽 にしび を背に歩き出した。 久しぶりに川へ行くつもりなのだ。 街はずれを流れている川のそばを歩くのが、愛犬の好みのコースのひとつだった。 街は、日暮れ前の混雑で騒がしい。 買物客であふれたスーパーの横から、住宅街に入... 2018/11/04
猿を聞人捨子に秋の風いかに 【富士川渡船場の絵。「五十三次名所図会 蒲原 岩渕の岡より不二河眺望」歌川広重画。国立国会図書館デジタルコレクションより 】 富士川の捨て子 東海道を西へ進む芭蕉一行は、箱根を過ぎて富士川の渡船場にさしかかる。 富士川付近からも富士山を望見できるのだが、 「富士を... 2018/10/31
芭蕉の江戸離れの句「霧しぐれ富士を見ぬ日ぞ面白き」 【「西行物語(敬文堂刊)」国立国会図書館デジタルコレクションより。「風になびく・・・」の歌は左側、後ろから二番目にある。】 西行の富士の歌 「西行物語」によれば、西行は陸奥への旅の途中、東海道を東に進みながら駿河国で 「風になびく富士のけふりの空にきえてゆくえも... 2018/10/29
秋十とせ却って江戸を指す故郷 【芭蕉紀行文集(岩波文庫)より「野ざらし紀行」の頁。】 「野晒紀行」の旅 「芭蕉年譜大成(著:今榮蔵)」の貞享元年のページには、以下の記述がある。 「貞享元年八月、芭蕉は初度の文学行脚に旅立つ。以後、生涯を終えるまでの十年の歳月の間に通計四年九箇月を旅に暮らす境... 2018/10/27
手を打てば木魂に明くる夏の月 【「芭蕉年譜大成」と「芭蕉紀行文集」。】 木魂信仰 「木魂(こだま)」は、森のなかの木に宿る精霊。 遠い昔には、そう言われていたという。 山や谷で大きな声を出すと、その声が遠くからかえってくるように聞こえる現象はこの「木魂」という精霊のしわざであると信じられ... 2018/10/24
上林暁の「野」を読んだ感想 【「本をつんだ小舟」と、「野」が収録されている上林暁の短編集「聖ヨハネ病院にて/大懺悔」】 「野」についての、宮本輝氏の読後感想 本棚を整理していたら、二十年ぐらい前に読んだ「本をつんだ小舟(文藝春秋)」という本が奥のほうから出てきた。 この本の著者は、宮本輝氏。... 2018/10/18