2017/06/19

幽霊を見た!

寝室の窓の外に女性の幽霊が

幽霊を見た。
夜中に目がさめて、なにげなく窓に目をやったら、窓の外に立っていたのである。
女性の幽霊が。

女性が立っていたのは、マンションの7階の窓の外で、とても人間の通行人が行き来できる場所ではない。
あれは、幽霊だ。
幽霊に間違いない。

同僚の忠告

居酒屋で職場の同僚と飲みながら、彼にそのことを話したら、意外と真面目な顔で訊いてきた。
「たしかにおまえは幽霊を見たようだが、その女性はおまえを見ていたのか?」

はて、どうだっただろう。
なにしろこんなことは初体験で、びっくり仰天してばかりで、よく覚えていない。
布団に潜って、聞きかじりのお経を唱えてふるえていたのだった。
そんな状態で、どのぐらいの時間を過ごしたのかも覚えていない。
覚えているのは、女性の幽霊が窓の外に立っていたということだけ。

「その女幽霊がおまえを見ていなかったとすると、それは、ただの通りすがりの幽霊だね。」
同僚は自信ありげに続けた。
「おまえに恨みを持っている霊ではないので、もう出ないよ。もしお前に恨みを持っている霊なら、恐ろしい形相でおまえを睨むはずだ。」

窓のカーテン

同僚の話のほうが恐ろしかった。
彼の話のせいで、恐ろしい形相の霊のイメージが頭から離れない。
四六時中、あの女性の霊におびえる破目になってしまった。
もちろん女性に恨まれるような覚えは、まったくない。

それから、夜中にちょくちょく目をさますようになった。
そして、こわごわ窓の外へ目をやるようになった。
私は、寝るときに窓にカーテンをしない。
カーテンをかけて寝ると、朝、決まって遅刻をする。
光が射し込まないと、朝、起きれないタイプなのだ。
だが、窓の外に幽霊を見てからは、ますますカーテンがかけられなくなった。
カーテンをかけると、今度は幽霊が部屋の中に入って来そうな気がしてならないのだ。

幽霊は横目で何かを見ていた

そんな変な強迫観念におそわれなが数日が過ぎた夜だった。
いつものように夜中に目をさましたら、窓の外に立っていた。
いつもの女性の幽霊だ。
同僚の話はあてにならない。
なぜなら、その幽霊は私を見てはいなかった。
もちろん。恐ろしい形相で私を睨めてもいなかった。
幽霊は、横目で何かを恨めしげに見ていたのだった。
私を見ていなくても、この幽霊は通りすがりの霊なんかじゃない。
「私を見ていなければ、通りすがりの霊で、もう出ないよ。」という同僚の言葉には、なんの根拠もなかった。
こわごわながらも、そのことだけは確認できた。
それに、横目の幽霊もけっこう恐ろしい。

「また出たよ。」
私は同僚に訴えた。
すると彼は、ビールを私のコップに注ぎながら「あ、そう。」と、あっさりうなずいた。
「それじゃ、その幽霊は、おまえを見ていたんだね。」
「いや、見ていなかった。横目で何かを見ていたようだった。」
「その横目方向には何があるんだい?」
友人は落ち着いた口調で訊いてきた。
寝室の横はトイレだった。

窓のカーテンを閉めて寝ると・・・

「やっぱりカーテンして寝なよ。」
同僚は、皿から豚足をつまんで、それをかじりながら言った。
「カーテンをしたって、中には入ってこないよ。その幽霊は、窓の外の霊なんだからさ。」
その訳知り顔には、妙な説得力があった。
そして、その訳知り顔にいつも騙されるのも事実だった。

私はその晩から、窓にカーテンをして眠ることにした。
夜中に目がさめても、窓の外はカーテンにおおわれて見えない。

だが、同僚の意見はことごとく外れた。
女性の霊は、今度は枕元に立っていた。
私は、恐怖のあまり身動きできずに金縛り状態におちいった。
やはり、同僚の言うことなんかあてに出来ない。
あいつは単なるホラ吹きだったんだ。
「アイツハホラフキ、アイツハホラフキ・・・・・」
恐怖の金縛りに襲われながら、私は頭のなかで「アイツハホラフキ」をお経のように繰り返した。

幽霊の忠告

「あんたさあ。」
意外と若い声で、女性の霊が話しかけてきた。
「毎晩毎晩飲んでるみたいだけど、あんたのウンチ、ものすごくクセエんだよ、迷惑なんだよ。」
スケバンのような口調だった。
『腸の中、悪玉菌がたまってんじゃねえの。「カスピ海ヨーグルト」食えよ。』

カスピ海ヨーグルト

恐ろしかった。
女性の幽霊も、腸の中の悪玉菌も。
それで毎日「カスピ海ヨーグルト」を食べることにした。
それ以来私は、あの女性の幽霊を見ていない。
なんだか腸の調子も良いようだ。
けっこう良い幽霊だったようだ。

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