冬の童話・手袋を買いに

小学校2〜3年の頃、学校の国語の教科書で読んだ「手袋を買いに」という童話を、今でも時々思い出します。

この童話が、冬の狐親子の物語なので、特に冬になると思い出すのです。

物語もそうですが、その教科書に載っていた子狐の絵(イラスト)のことも記憶にあります。

温かそうな雰囲気に包まれたようなイラストでした。
可愛い子狐とお母さん狐が寒い雪の中で寄り添っているイラストに、子どもながら当時の私は温かいものを感じたのだと思います。

そのイラストが、新美南吉氏の原作に付いていたものを教科書に転載したものなのか、それとも教科書用に新たに描き加えられたものなのかは、今となっては不明です。

逆に、その情感あふれるイラストから物語の筋が生まれたような感じの、イラストと物語の一体感・融合感に幼い私は強く心をうたれて、今でもその教科書に載った童話のことを覚えているのだと思います。
もしかしたら、教科書に載ったイラストの印象から、私はその童話を書き替えて記憶しているのかも知れません。

手袋を買いに人間の町の商店に行く子狐と、それを心配そうに見送る母狐。
狐と知りながらも、お金が本物なので手袋を子狐に渡す商店主。
子狐の帰りを心配して待つ母狐と無事合流して、一緒に寄り添って巣へもどる母子。

小学生の私はイラストに見入りながら、この物語を読み進めたのです。
そして、この幻想的なイラストと物語にリアリティーを強く感じて、この話は真実の事だと思ったのでした。

この冬景色のどこかで、この狐の親子が暮らしているに違いないと思ったのです。
「手袋を買いに」という童話を、幼い感傷生活の中に入った現実のニュースのように受けとめたのです。

優れた童話は、子どもの世界観に大きな影響を及ぼすものなのでしょう。
それが童話の持っている普遍性だと思います。
狐の親子の情愛が、私の中で歳を経ても生き続けていたから、私はこの物語のイメージを忘れないのだと思います。

まだ心が澄んでいた時期に澄んだ物語に出会ったことで、その物語の澄んだ記憶が60歳の男の雑多な心の片隅を、今でも占めているのです。

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