いつも「耳あか」が湿っている
耳。 |
私の耳あかはウイットタイプ(湿性)だ。
子どもの頃からそうだったので、耳あかは湿っているものだと思い込んでいた。
汚い話だが、「耳くそ」はドロドロの糞、「鼻くそ」はコリコリの乾いた糞。
それが私の、「耳くそ鼻くそ観」だった。
ところが、周囲には、乾いた耳あかの子ども達が多かった。
彼らは湿ったネバネバの耳あかが珍しいらしく、よく私のことを「おまえは耳垂れだ」と言っていた。
そのことを親に言ったら、それは耳の病気からくるものではなくて、そういう「耳あか」もあるのだと諭された。
理髪館のマダムは、欧米人はウイットタイプの耳あか、日本人はドライタイプの耳あかが多いのよ、と耳掃除のプロらしい知識を披露していた。
調べてみると、縄文人の耳あかはウイットタイプ、弥生人のはドライタイプが多かったという研究報告もあるとか。
欧米人云々よりも、縄文人の話の方が好感を持てた。
縄文人という呼称は、日本の先住民というイメージが濃いので好きなのだ。
ところで、「目くそ鼻くそを笑う」という言い回しがある。
これは「似た者同士の貶し合い」というほどの意味。
「目くそ耳くそを笑う」とはなぜ言わないのだろう。
実は、「耳くそ」は「目くそ」や「鼻くそ」と違って重要な働きを行っているらしい。
(1)耳あかは酸性で蛋白分解酵素が含まれているので、耳あかには殺菌作用があるらしい。
(2)耳あかは、耳の中に適度な潤いを保ち、皮膚を傷つきにくくする皮脂が出ていて、皮膚を保護しているのだという。
(3)また耳あかは耳の中への虫の侵入を防ぐ役割もあると言われている。
「耳くそ」は「目くそ」や「鼻くそ」よりは有用であるらしい。
もしかしたら、「耳くそ」は「目くそ」や「鼻くそ」を笑っていいのかも知れない。
しかし、たぶん笑わないだろう。
「耳くそ」には縄文人の誇りがあるからさ。