「わきが」が病気なら「髪の毛が薄い」も病気か?
接客時、わきがが気になる季節。 |
私のような湿った耳あかを、「飴耳」と言うのよ、とマダムがつぶやく。
「へえ、飴耳ってキャラメルみたいな感じかな?」と私。
「そう。四角いキャラメルがベチャベチャになって腐ったみたいな、キャー、なに、これー、キタナイーッてみたいな、ウヒャヒャヒャ・・・」
例によって、身をよじって高笑いするマダム。
「で、飴耳の人って『わきが』なのよねー。」
言われるまでもない、私は「わきが(腋臭)」なのだ。
「『わきが』って、ちゃんとした病気だから健康保険で治療できるのよ、私の知り合いがそれで手術したのよ。」
「ちゃんとした病気」という言い方も何か変だが、このマダムが言うと普通に聞こえる。
「へー、こんなんで手術かよ。じゃアメリカ人はみんな手術しているのかねえ。」と私。
事実、西洋人は飴耳で「わきが」が多いのだ。
黒人にいたっては、100パーセント「わきが」だそうだ。
「アメリカじゃ病気じゃ無いんじゃない?だってみんな『わきが』なんだもん。」
アメリカ社会で体臭がきついから病気だと言ったら、病人だらけになってしまう。
日本人は飴耳も「わきが」も少ない。
だから、少数の者から発せられる強い体臭は不快であり、大多数の者の「社会的な被害」みたいなもになってしまう。
悪臭を放つ「わきが」は早く治療して、「正常な社会人」として人前に出なければいけないというのが、デリケートな日本人の良識となっている。
手術をするまでもなく、不快な体臭を抑える努力をすることが、社会的なマナーである。
それはわかっているさ。
「じゃ、ハゲも病気なのか。ハゲも日本では病気なのか。」と、いきなり支離滅裂な私。
理髪館のマダムは、私の薄くなった頭頂部の髪の毛をなでながら、
「少なくとも、あんたのハゲは病気じゃないね。ウヒャヒャヒャ、ウヒャー。」と、面白そうに笑った。