無人の家の屋根は、雪が落ちにくい
妻側の軒先へせり出した屋根の積雪。 |
休み中は、住まいの方の雪かきに追われて、仕事の事務所は3日間留守状態になった。
戸外の気温はマイナスで、家の中が暖房無しの冷えきった状態だと、屋根の雪は右の写真のような状態に。
この3日間、積もった雪が滑り落ちずに、屋根に載ったままになっている。
トタン屋根のペンキは、昨年、塗り替えたばかりだから雪の滑りは良い状態になっているはず。
切妻造りの屋根の傾斜も、まあまあの角度で、建築物としての落雪の条件は整っているのだが。
低温状態が、屋根の落雪に歯止めをかけている。
妻側に引き込んである電線と電話線は、雪が覆いかぶさった重みで張り切っていた。
切れてはいけないと、すぐに角材で突っついて、軒にせり出した雪を落とす。
荷重から解放された電線が空に踊る。
降雪の合間の、つかの間の冬の青空。
今日の「出社」は、お昼近くだった。
部屋に入って、さっそく石油ストーブのスイッチを入れる。
室温を20度近くに保って仕事をしていたら、午後3時半頃、轟音とともに東側に傾斜している屋根の雪が滑り落ちた。
いちばん下の写真が、轟音の後の、屋根雪が落下し終わった状態を写したもの。
大量の雪塊なので、落雪時に人が軒下を歩いていたら、その人の命は無い。
こんなに大量の雪塊の中に埋まってしまっては、他人の助け無しに抜け出すことは不可能だ。
屋根から滑り落ちた雪は、山岳での雪崩のように、雪塊が固く締まっている 。
一旦雪の下敷きになったら、自力では身動きがとれない。
屋根からの落雪による死亡事故は、こうして起こる。
雪の無い南国地方で暮らしている人々には、ちょっと想像し難い出来事かも知れない。
私が借りている事務所(貸家)の東側は、奥の住宅地へ通じる抜け道になっている。
大家さんの私有地なのだが、無断で通行する人が多い。
そこで、写真にも写っている「落雪危険につき通行厳禁」のプレートを家の壁に貼付けたのだが、通り抜けに利用する人は後を絶たない。
無人の家の屋根は、雪が落ちにくいから、無人の家は雪の重みで倒壊しやすい。
屋根に雪止めを付けているとなおさらだ。
屋根の雪下ろしをしていない木造建築の家は、雪の重圧で押しつぶされてしまう。
なかなか雪が落ちてこないからと軒下を通ったら、運悪く屋根の雪が落下して通行人を襲う結果になったりする。
雪に事故はつきものだ。
そういう雪の性質を見極めることも雪国の仕事のひとつ。
雪国に暮らす人にとって、冬になれば雪は身近な存在なのだが、なかなか事故が絶えない。
無人の家の屋根は、雪が落ちにくいが、もし落ちたら、それは「一瞬即殺」なほどのエネルギーを持っているのだ。
東の平側の軒にせり出した積雪。 |
轟音とともに屋根雪が落下した。 |