2014/03/18

日常のさりげない存在感(安価な代用品としての木製丸椅子)

丸椅子
丸椅子の丸い座板。


たいていはどこの家庭にも置いてある家具。
丸椅子。
椅子のなかでは、もっともシンプルな構造をもつもの。

椅子と言うよりも腰掛けと言った方がふさわしいような道具。
腰を据える物としては快適ではないが、その場しのぎの腰掛けとしては便利な道具。

安価で便利な木製丸椅子

右の写真の、木製丸椅子は市価1,200円ぐらいのもの。
安価な日用品だが、その活躍の場は広い。

背もたれが付いていないので、前後という制約が無い 。
従って全方位性で、丸い形の座板はどの向きからでも座ることができる。
軽くて小さいから、家の中のあちこちに移動出来る。

食卓が満席の場合の臨時椅子になる。
平ったい座板の上にお茶の入った湯のみを置いて、休憩するのも良い。
気分転換に鉢物を置いてリラックスしても良い。
洗濯機の横に置いて、取り出した洗濯物の一時置き台に。

そのときどきに、家庭内犬が近づいてほしくないところに置いて、ペットのバリケードにすることもできる。
使用注意書では禁止事項になっているが、踏み台の代用として使用している人も多い。
極端な話だが、丸椅子を盾のように使えば、不審な侵入者を防ぐための護身道具にもなり得る。

日常のさりげない存在感がひっくり返る

活躍の場が広いと言うことは、危険に遭遇する機会も多いかも知れない。
一見平穏な日常を形にすると丸椅子になる。
いつも交わされる雑談に、よく似合う丸椅子。
間に合わせの会話と、どこにでも馴染んでしまう腰掛。

のどかな日常にポツンと置かれた丸椅子。
それほど木製丸椅子は、さりげなく生活に溶け込んでいる。
木製丸椅子の周辺には、安定した生活の信頼感や安心感が漂っている。
木製丸椅子は、平穏な安心感のインテリアとして、周囲の空気を和らげる。

しかし一方では、毎日の生活の片隅から、感傷に染まらない「リアルな日常」を提示してもいるようだ。
平穏な雰囲気を醸し出している木製丸椅子は、そういう日常がひっくり返る危うさをも示している。
そのことに、多くの人々はあまり目を向けない。

日常のさりげない存在感の裏。
座るという安定した行為とともに、座るという不安定な日常の動作から見えてくる現実。
平穏な日常がザルにかけられ、現実の床に、より微少な日常がふるい落とされる。
木製丸椅子に座っているのは、さりげない存在感の微少な日常だ。
平穏さとともに、不穏な危うさのオブジェとしての木製丸椅子。

移動可能で、転倒可能で、落下可能で代用可能な日常。
代用品のさりげない存在感は、様々な可能性を含んだ微少な日常から発せられているのかもしれない。


逆さまの丸椅子
ひっくり返った丸椅子。


座板の裏に注意書
丸椅子の注意書。