雑談散歩

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「遊ぶ金」と「悪い遊び」、金と遊びの色分け

つい最近のニュースに、スキー大会表彰式の最中に、優勝者のスキー板が盗まれるというのがあった。
皮肉なことに、容疑者はかつてスキーアルペンの選手として活躍し、2004年に全日本学生大会で優勝したこともあるという人物だった。

その容疑者は、盗んだスキー板を中古品店に持ち込みお金に換えていたらしい。
男は「遊ぶ金がほしかった」と容疑を認めているという。

当事者には失礼だが、「遊ぶ金」というお金の区別が面白いと感じた。
こういう類の「事件」は、よく耳にする。
「遊ぶ金ほしさに強盗した」とか「遊ぶ金ほしさに横領した」とか。
もともとお金は色分けされているわけではないが、容疑者が手に入れて使用したお金が「遊ぶ金」として色分けされてしまう。

「遊ぶ金」と言っても、お金が遊び歩く訳ではない。
「遊びに使うことを目的して手に入れた金」の略。
それが、犯罪の動機としての「遊ぶ金」なのだ。
ただ「金がほしかった」では、窃盗の動機にはならないだろう。
「目的+金」という「言分け」を求められる。
その「言分け」がお金に反映して、お金を色分けする。

「遊ぶ金」という表現の「遊び」の内容は、俗に言われているような「飲む・打つ・買う」がほとんど。
「飲む・打つ・買う」とは、以下の楽しみのこと。
  1. 夜の歓楽街で飲食を楽しむ。
  2. ギャンブルを楽しむ。
  3. 風俗譲との特別な交際を楽しむ。
  4. 麻薬や覚醒剤でハッピーな気分?を楽しむ。
上記の「楽しみ」に支払われるお金が、「遊ぶ金」として色分けされる。

色分けされた「遊ぶ金」は、他の「まっとうな金」との違いを明確にする。
尊い労働で得たお金を、こんな「遊び」には使えないという風に。
「遊ぶ金」は非生産的に使われ、「まっとうな金」はまっとうな暮らしのために使われる。

「遊び(飲む打つ買う)」とは、生活費以外の「余ったお金」で行うものという感覚をお持ちの方も少なくないようだ。
「余ったお金」のなかには、拾ったお金や盗んだお金が含まれる。
ということは、「遊び」自体が「生活」の枠外の行為。
「遊び」は、「生活」のなかに組み入れるべきものではない。
そういうものとして考えられているフシがある。

しかし、人生では、「生活」と「遊び」は一体である。
多くの善良な市民は、少ない収入の中からお金を工面して、「遊び」で気分転換をする。
仕事や家庭生活のストレスを発散させる。
遊びを人生のエネルギー源のように考えている人達もいる。

その「遊び」は、上記4点からは外れたものが多い。
釣りをしたり、ハイキングを楽しんだり、映画を見たり、スポーツを楽しんだり・・・・さまざま。
だが「遊び」という言葉でクローズアップされるのは、バッドイメージの方が多い。
そっちの方への、世間の関心度が高いから。

「遊び」という行為もまた色分けされている。
「健全な遊び」と「不健全な遊び」。
この「不健全な遊び」の色が「遊ぶ金」の色と同一であり、「遊ぶ金」は場合によっては「不正に入手した金」に色分けされていくこともある。
「不健全な遊びをするお金がほしかった」という申し開きは、犯罪の動機としてはかなりの説得力を持っている。
それによって、「遊ぶ金」が特別な「金」としての存在感をアップする。

「遊ぶ金」を色分けするのは、容疑者よりも、私たちマスメディアの視聴者なのかもしれない。
そう色分けすることで、「遊ぶ金=不健全な遊び=悪い遊び=悪事」というイメージをつくりあげる。
「悪い遊びの世界」にどっぷりと浸かっているから、悪い事をするのだと、世間に解釈される。
そして容疑者は、盗んだ自分も悪いのだが、「悪い遊び」の存在が、自分をそういう行為に走らせたのだと、自身で密かに納得をする。
悪いのは、誘惑に弱い自身と「悪い遊び」。
ということで、自身の悪さが半減するような気分を獲得しているのかもしれない。

一方で、「悪事を働いて得た金」を「遊ぶ金」にして「社会悪」に染まったという図式も出来上がる。
「悪」と「悪」をつなぐのが「遊ぶ金」というイメージがマスメディアの視聴者に広がる。
世間に広がる。

「遊ぶ金」は「遊ぶ」と「金」に分かれる。
「金」は生活するうえで必要なものであるから、「金」の悪口を言う人は少ない。
となると、悪いのは「遊ぶ」ということになる。
人々は、そういうイメージをもつ。

「遊ぶ金がほしかった」という容疑者の言分けは、世間一般の「遊び」に対するイメージダウンにつながる。
こうして、「遊び」に対する世間の偏見が強まり、レジャー産業が少しづつ衰退する。
ということもあるかもしれない。
あるいは、レジャー産業はもっとしたたかで、そんなことではビクともしないのかもしれない。

風が吹けば、桶屋が儲かる。
「遊ぶ金がほしかった」でレジャーが廃れる。
あるいは、「遊ぶ金がほしかった」で「悪い遊び」が世間にデビューする。
デビューを繰り返す。
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