桜の花は、仕舞い際が美しい

最後の桜花。
桜は、散り際が美しいとは、よく聞くお話。
散り際とは、咲いていた桜の花が、咲いていた姿のまま散り始めるときのこと。
桜吹雪も、散り際の美しさになるのだろう。

美しい姿のまま、ぱっと潔く散る。
萎んで枯れかけても、まだ枝先に付いている花は潔くないというイメージ。
日本人が桜が好きなのは、その散る姿が美しいからだと言われている。

そんな桜の散り際も、とっくに過ぎて。
桜の若葉が枝を覆うようになっても、まだ付いている花がある。

その花の色や形は、群れて咲いている時期の姿よりもずっと美しい。
桜吹雪も終わって、もう誰も桜を見上げなくなった頃、ぽんと花を開いて、ぽつんと咲いている。
これは、仕舞い際の桜。

一斉に咲いていた花よりも、ちょっとピンクが濃い。
萼片(がくへん)の色は、さらに濃く、それが程よいコントラストとなっている。
同じソメイヨシノの花とは思えない個としての美しさが感じられる。

姥桜とは、葉よりも先に花が開く桜を、歯の抜け落ちた「姥」にかけて、相当の年増女でありながら艶かしい女性を例えた言い方だとか。

写真の桜は、そういう姥桜では無いが、どことなく艶やかさがある。
桜の花はもう仕舞いなのだが、その仕舞い際に咲いた花が、時期に咲いた花よりも一層艶やかである。

遅く咲いているからといって、遅咲きの桜ではない。
遅咲きの桜とは、八重桜や霞桜のこと。

写真の桜は、同じ幹の花で、他の花が散ってしまって葉が出揃った頃に咲いた花なのだ。
だから、散り際の桜でもなく、遅咲きの桜でもなく、仕舞い際の桜と言った方がピンとくる。

店仕舞いにぽんと咲く。
おまけの桜。
あまり人に見向きされないおまけの桜。
「残り物に福あり」という心情は、あまり潔くは無い。
潔くは無くても、仕舞い際の桜の花は美しい。

葉の陰にかくれて、ちゃっかり咲いている。
時期はずれのちゃっかり美人の花見も良いのでは。

花見の喧騒の時期が過ぎてから花見する。
花の姿を丁寧に眺める。
群れて咲いていた花では、気がつかなかった桜の別の美しさがあるような。
桜の花は、仕舞い際が美しい。
散った花と出揃った葉。
凛とした美しさ。
静かな花の舞い。

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