雑談散歩

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樹齢800年、驚異のヒバ(ヒノキアスナロ)の巨木、喜良市の「十二本ヤス」

十二本ヤスの看板。


青森県五所川原市金木町喜良市字相野山にヒバ(ヒノキアスナロ)の巨木がある。
この巨木の名は「十二本ヤス」。

ヒバとは、ヒノキアスナロの青森県での呼び名。
青森県内で産出されるヒノキアスナロの木材は青森ヒバと呼ばれている。
青森ヒバの森は、木曽ヒノキ、秋田スギと並んで、日本三大美林と称されている。

「十二本ヤス」という名称の由来は、巨木手前の看板に、下記のように書かれている。
幹の途中で12本の枝が分かれて、ちょうど魚を突いて取るヤスの形をしているところから、だれ言うとなく「十二本ヤス(シ)」と呼ばれるようになった。

階段を登った正面の十二本ヤス。


「十二本ヤス」は喜良市の奥深い山中にある。
「十二本ヤス」の看板に導かれて畑に囲まれた農道に入り、暗い杉林を抜け、小沢の狭いコンクリート橋を渡ると、山中に水田が広がっている。
付近には、今は草に埋もれてしまったが弥生時代の遺跡がある。

その水田を抜けて、金木川に沿った未舗装の林道をクルマで進むと川の合流点に架かっている橋がある。
この橋を渡ってすぐの道が、去年(2014年)、相野股沢へ崩落していた。
まだ林道の完全修理にはなっていないようで、今年も通行止めになっている。
橋の手前に、乗用車5~6台分の駐車スペースがある。

ここにクルマを停めて、母沢(もざわ)沿いの林道を5分ぐらい歩くと「十二本ヤス」の看板が立っている。
「十二本ヤス」へは、左手の、鳥居下の階段状の遊歩道を登る。
ちょっ登ると、ヒバの巨木は、すぐに現れる。


十二本の直立した太い枝(幹)。


手前の看板によると、「十二本ヤス」の詳細は以下の通りである。
樹種:ヒノキアスナロ(別名ヒバ)
樹高:33.46m
幹周:7.23m
樹齢:800年以上
所在地:青森県北津軽郡金木町喜良市山
この看板には以下の事も記されている(句読点ママ)。

神木
ヤスの形をした枝は、新しい枝が出て十三本になると必ず一本枯れて、常に十二本になるということから、十二とは十二月十二日の山の神祭日に通じる神聖な数、これは山の神様が宿ったに違いないということで、鳥居を奉納、神木としてあがめ、今日に至っている。金木町の名木である。

伝説
昔、弥七郎という若者が山の魔物を退治したとき、その供養に、退治したときの切株に一本のヒバ苗を植えたという。その木が十二本ヤスになったという事である。

新日本名木百選
平成二年六月二日 国際花と緑の博覧会協会 選定



驚きの幹の太さ。


「十二本ヤス」の位置から山の斜面にかけて、ヒバや杉の大木が多い。
倒木を見かけないから、山が風を防いでいるような地形なのだろう。
生育条件の良い土地であるから、「十二本ヤス」は800年近くも生き延びて巨木になったのか。
条件がそろえばヒバは相当の生命力を発揮するのかも知れない。

樹高が33.46m。
そんなに高い位置まで水分を押し上げるエネルギーはどこから湧いてくるのか。
山を伏流して下りてきた水の力を、樹木の幹の水路を駆け上る水の力に変える。
平地ではできないポンプの仕組みが、山にはあるのだろう。
それが山のなせるわざ。

相野の山があっての「十二本ヤス」なのだ。
神や信仰や、人の暮らしを育んでいるのは山なのだとつくづく感じた。
「十二本ヤス」は、ここらへん一帯の「山の気」の化身なのかも知れない。
だから、地元の人々は、山の力への感謝として、「十二本ヤス」を祭っているのだろう。

ちなみに。
「十二本ヤス」の十二本の「枝」とされているものは、「株立ち」した十二本の幹なのではあるまいか。


十二本の枝(幹)のアップ。赤い木肌が美しい。
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