雑談散歩

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夕暮れの公園で、哀愁の落日

夕暮れの公園で子どもたちが遊んでいる。
公園の広場は、業者による草刈りと清掃が済んだばかりで、スッキリとした遊び場になっていた。
子どもと言っても、中学生ぐらいの背丈だろうか。
ワイワイ騒ぎながらドッジボール遊びに夢中になっている。
夕焼けに、公園樹の影が赤い。

愛犬は、うるさいのが苦手なので、いつもは入る公園の中へ今日は入らない。
公園の脇の道路をスタスタと通り過ぎる。
通り過ぎながら、ときどき頭を上げて、公園の方を見ている。
私もつられて、公園で遊ぶ子どもたちを眺めた。

すると、私の目は、ひとりの小柄な少年に釘付けになった。
丸刈りの頭。
細い体つきだが、労働に明け暮れている大人のような体の動き。
顔つきも、中学生にしてはどことなく老けて見える。
中学生のなかに、小柄なオヤジが混じって遊んでいるのだろうか。

目を凝らしてその少年を見つめたが、夕日が逆光になっていてよくわからない。
中学生に見えたりオヤジに見えたり。
だが、公園の中学生たちの遊んでいる姿に違和感はない。
そろってドッジボール遊びに夢中だ。
たぶん老け顔の中学生なのだろう。
そんなことを思いながら、愛犬とともに公園を後にした。

私たち(私と愛犬)は、隣町の静かな公園まで散歩の足をのばし、その公園でのんびりした。
公園の真ん中に、旧式の大きな噴水があって、まるで小便のかけ合いみたいに激しく水を上げている。
その噴水のプールの縁に腰を掛けて、雑談している仕事帰りのアベック。
ジョギングする人、散歩する人。
静かな平日の夕暮れだった。
私はベンチに座って、愛犬の頭を撫ぜた。
年老いた犬は、そのまま寝入りそうになる。
コックリコックリ、ベンチの腰掛け板であごを打ち、ぼんやり目を開ける犬。
私は愛犬を立ち上がらせ、来た道をもどった。

子どもたちが遊んでいた公園の脇に、パトカーがとまって、赤い回転灯を回している。
広場には、おそろしく背の高い警官が二人いて、子どもたちを集めて何かを尋ねていた。
愛犬は、うるさいのが苦手なので、公園の中には入らない。
近所の大人たちが、公園の中で心配そうに子どもたちを見ている。
二人の警官は、例のオヤジ中学生を見下ろして、手帳の上で忙しく手を動かしている。
小柄な少年は首を90度曲げて、警官を見上げているようだった。

もう陽は沈みかけて、公園の広場は暗い。
私たち(私と愛犬)には、はるかに遠い光景のように見えて、人々の表情はわからない。
はたして少年は、中学生だったのか、中学生と一緒に遊ぶ小柄なオヤジだったのか。
真相は闇につつまれて、私たちには不明だ。
哀愁の落日だった。

愛犬は、後ろを振り返り振り返り、ヨタヨタと帰る。
家の戸口が近づくと、老いた犬は大きなあくびをして、ブブとおならをもらした。

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