雑談散歩

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春の芽吹きの素晴らしさを見物できるのは、雪国生活者の特権

カツラの雌花。去年の果殻がまだ枝に残っている。
公園の残雪は、小さな塊状態になって日陰に点在している程度。
直径50~70cmぐらいのものが数個しか残っていない。
周辺から、日増しに冬の名残が消えていく。

立春を過ぎたら春めいてくるのは南の地方の話。
雪国では、「春分の日」を過ぎても、冬の気配が濃厚なときがある。

もう、そんな時期も過ぎて。
このところ気温の高い日が続いて、木々の芽吹きの進み具合が早い。
この地方の桜の開花予報が、どんどん早まっている。

だが、蕾が生育しているのは桜だけではない。
公園のカツラ並木では、濃い赤紫の花が開きかけている。
カツラは雌雄異株。
この公園では、雌花の方が、いつも先に花開く。
風媒花の小さな花の、独特の姿が面白い。

カツラも桜と同様、葉が出る前に花が咲く。
花が咲きかけると、カツラ並木の枝先が赤く染まる。
人々は桜にばかり気をとられていて、このことにあまり気づかない。

「私を忘れちゃいませんか」
カツラは、桜が咲く前に楽しめる花なのだ。

濃い赤紫は、厳しい冬に耐えた勝利の色のようである。
その鮮やかさは、雪国ならではのもの。
白い雪に閉じ込められていた期間が終わると、カラフルな春の彩りがあちこちに。
それを見物できるのは、雪国の特権である。

カツラの雄花。

枝先が赤みを帯びてきた公園のカツラ並木。

雪囲いが解かれていない植栽の向こうで、サンシュユの黄色い花が咲いている。
上の写真は、サンシュユの黄色い開花。
周りの植栽は、まだ冬の雪囲いを解かれていないが、サンシュユはどんどん「己が春」を進めている。
その黄色い花は、遠目にも目立つので、この花を見に訪れる人は少なくない。
桜のような華やかさは無いが、見ていると楽しい気分になってくる。
希望が、勢いよく飛び出しているような印象がある。
桜よりも、雪国の春を象徴する花なのだ。

私の身の周りで、春を迎える花といえば、カツラやサンシュユである。
花見の華やかさは、南の方からやってくるが、その騒ぎに巻き込まれることなく、早めに、密やかに咲く姿が良い。

この花たちが散る寂しさを、紛らしてくれるのが桜なのかもしれない。
そのために、日本人は、せっせと桜を植えてきたのだ。

早春に咲く花も、春の盛りに咲く桜も、どの地方に居ても見物できる。
しかし、雪融けの早春に咲く花の鮮やかさは、雪国のものがいちばん。
花芽だけでは無く、新緑につながる葉芽の薄緑も澄んでいて、良い色。

雪国の自然の色は、人間の感情に働きかけ、人を勇気付ける。
雪国の春には、命を賞賛する「色の力」が溢れている。

こうして、春の芽吹きの素晴らしさを、身近で発見できるのは、雪国生活者の特権であるね。


サンシュユの花の笑顔。

シダレカツラの蕾。
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