そんなに臭く無かったヘクソカズラ
ヘクソカズラの花が咲いている。 |
堤小学校の校庭の北側にドウダンツツジの生垣がある。
その生垣の東角に、ヘクソカズラの蔓が巻き付いていて、今が花盛り。
小さな花だが、よく見ると可愛い姿をしている。
花は釣鐘状で白く、花の先が浅く5裂している。
花の筒の部分は10~15ミリほどの長さで、筒の内部は渋目の紅紫色。
花のつき方は、野葡萄のように集散花序で、とても賑やかだ。
蔓性の植物で、蔓の色は、赤っぽかったり緑色だったり様々である。
葉は、ハートをちょっと細長くしたような形で、ヤマノイモの葉に似ている。
ヘクソカズラの葉。ヤマノイモの葉にちょっと似ている。 |
花に顔を近づけても何も匂わない。
ヘクソカズラと呼ばれているぐらいだから、周囲に強烈な悪臭を放っていると思われがちだが、無臭である。
葉をちぎったり蔓を折ったりすると、かすかに匂う。
ちょっとした青臭い匂い。
その匂いは、他の草花と変わらないように私には思える。
ドクダミよりも強烈な臭いだろうかと想像していたが、たいしたことは無い。
おそらく、この植物を駆除しようと、蔓を引っ張ってちぎったり鎌で切ったりして大格闘すると、多数の傷ついた部位から出た匂いが混じって濃くなり、ヘクソカズラの呼び名に恥じない悪臭になるのではと、私は推測している。
しかし、それもやってみなければわからないこと。
この植物の繁殖力は相当なもの。
水平方向と垂直方向に広範囲に伸びる。
生垣にややこしく絡まりながら、ドウダンツツジの制空権を奪おうとしているかのようである。
端正な生垣を襲う侵略者のよう。
ヘクソカズラと命名された昔も、こんな調子で草薮を席巻していたに違いない。
往時の園芸家や庭師たちから、「このクソ野郎!」とか「クソいまいましい蔓(かずら)め!」とか罵られているうちに「クソカズラ」と呼ばれ、その勢いに乗って「ヘクソカズラ」という名称が付いてしまったのだろう。
匂いよりも、増殖して周囲を占拠してしまう蔓草のふてぶてしさ。
これに手を焼いた人々が、この植物に「ヘクソカズラ」という呪いの言葉を浴びせたのだろう。
屁だの糞だのと毒づかれたのは、この草の、悪環境でも縦横無尽に生育する生き様だったのでは。
ヘクソカズラには「サオトメバナ」という美しい別名もある。
心優しい野草愛好家が、こんな可憐な花を咲かせるのに「ヘクソカズラ」という名では忍びないと嘆き、醜悪な「屁糞」とは真逆の「早乙女」という名をつけようとしたのではあるまいか。
とても賑やかな、花のつき方。集散花序。 |
花筒の内部は紅紫色。 |
蔓を伸ばして天空を目指す。 |
ヘクソカズラの花の拡大写真。花の中から白い花柱が顔をのぞかせている。花弁の内側に腺毛がびっしり生えている。 |
花は筒型。先の方で5裂している。 |
ドウダンツツジの生垣の一角で繁茂するヘクソカズラ。 |
堤小学校の南側の、歩道に面した柵の側でもヘクソカズラが生育していた。
こちらの個体はまだ若いのか、葉が細長い。
背の低いカシスの植え込みに巻き付いて、木を覆い隠している。
そこから5メートルぐらい、地を這って延びている蔓もある。
このまま手をかけないでいると、どれぐらいの規模に繁茂することか。
それを見るのも、愛犬の散歩の楽しみ。
ヘクソカズラは、まだ花が咲いているうちに、傍らの終わった花から順に緑色の果実ができる。
その実は、秋になるときれいな黄褐色に熟す。
じつは、その実がかなり臭いらしいのだが、私は嗅いだことが無い。
堤小学校南側に生えているヘクソカズラ。こちらの葉は細長い。 |
校庭(南側)から歩道にあふれ出ている。 |
カシスの植え込みを覆い隠すヘクソカズラ。 |
校庭の柵に沿って這い延びるヘクソカズラの蔓。 |