2016/11/15

「名月や煙はひ行く水の上」服部嵐雪

木の枝のあいだからスーパームーンが上る。
この頃、夕方の愛犬の散歩で夜空を見て、この間からお月様が大きく見えるなあと思っていたのだった。
今日のニュースで、どうやらそれは、「スーパームーン」のせいであることがわかった。
スーパームーンとは、月が地球に最接近した日が、月が満月となった日と重なる現象のこと。
月は楕円状の起動を描いて地球の周りを回っているから、こういう現象が起こるらしい。
その日が、本日の11月14日。
満月として最接近するのは、68年ぶりの出来事だとか。

散歩の途中、コンパクトデジタルカメラでスーパームーンの写真を撮ってみたが、オートで撮るのでご覧の通りお月様が真っ白に写ってしまう。
月って、けっこう明るいのだ。

名月や煙はひ行く水の上
服部嵐雪

掲句も、私の好きな句である。
スーパームーンを眺めながら、嵐雪が見た名月はどんなお月様だったのだろうと思いを巡らした。
「煙はひ行く水の上」で満月が煌々と光り輝いている。

ところで「煙」って何だろう?
古文で使われる「煙」には、いろいろな意味がある。
Weblio古語辞典で調べたら、以下のようなことが書かれてあった。
  1. けむり(火から出る煙)。
  2. 水蒸気、霞(かすみ)、靄(もや)、霧。(煙のようにたなびいたり、かすんだり、立ちのぼったりするもの。)
  3. 火葬の煙。
  4. 炊事の煙。
この「煙」がどんな「煙」にせよ、夕暮の水面の上を這うように行き過ぎる「煙」であることに違いはない。
その水面は、川面であるかもしれないし湖面であるかもしれない。
もしかしたら海面であるかもしれない。
海霧がたちこめる海面から上る満月とくれば、雄大だが、あいにく海霧は主に夏に発生する。
名月と合わない。

やはりこの句の「水の上」は、川か湖か沼か池か内陸の水面なのだろう。
そこには森があって山があって、ひっそりと暮れていく風景がある。
そのような「水の上」で、水面と霧と、煌々と白く輝いている月。
「水の上」から空へ上って行く満月。
それは、映画のワンシーンのような、静かな夕暮の景色である。

寒気が入って、冷え込んだ夕暮。
周囲の空気よりは温度の高い水面から、蒸気霧が上がって揺らめく。
それが風に押されて、水面を這うように移動する。
幻想的な世界。
「水の上」の美しい満月が、あたりをいっそう幻想的にしている。
現実が暮れていく狭間に現れた夢幻の世界。
蒸気霧が、幻の煙のように水面で舞っている。

名月や煙はひ行く水の上

公園のヒマラヤスギの梢にスーパームーン。

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