雑談散歩

    山スキーやハイキング、読書や江戸俳諧、山野草や散歩、その他雑多なことなど。

一茶の風とインターネット「焚ほどは風がくれたるおち葉かな」

「今日はヒトデ祭りだぞ!」というブログで、「【100万PV達成】雑記ブログでアクセスアップする方法を全て教える」という記事をみつけた。

【100万PV達成】とは、一ヶ月間にブログのページビュー数(PV数)が100万回あったということ。
ページビュー数とは、ブログのページが開かれた回数を表す数字のことである。
このページビュー数の数字が多いブログは、それだけ多くの訪問者が訪れているということになる。

月間100万PVと言うと、一日あたりの平均PV数が約33,000回。
これは、すごい数字。
私のブログ「雑談散歩」の、PV数の一ヶ月分でさえ33,000回には遠く及ばない。

「今日はヒトデ祭りだぞ!」の運営者のヒトデ氏が言うには、「ここに来るまでサロン等には結局1つも入りませんでした」とのこと。
ここでヒトデ氏が言っている「サロン」とは、ホームページへの集客方法のノウハウを有料で伝授するという「有料情報サロン」のこと。
有名なイケダハヤト先生が開催している「ブログ塾」も、「有料情報サロン」である。

私がこのブログの記事を読んで注目したのは、「ここに来るまでサロン等には結局1つも入りませんでした」の後に続いている「必要な情報は基本的に全部インターネットに無料で落ちてました」という部分。

これを読んだときに、頭に思い浮かんだのが小林一茶の次の句だった。

(たく)ほどは風がくれたるおち葉かな
小林一茶

掲句は小林一茶の句日記である「七番日記」の文化十二年十月の項に載っている。
風が、枝から枯葉を落として、それを私(一茶)のもとへ運んでくれる。
そうして風が運んでくれるから、自分が生活していく分には、焚き物(燃料)に不自由しなくて済んでいる。
自然の恵みに感謝しながら淡々と生活している一茶のライフスタイルが思い浮かぶ句である。

ヒトデ氏の記事を読んだ時、なぜこの句が頭をよぎったのだろう。
ヒトデ氏は俳諧師ではないし、おそらく自然の恵みを享受しながら倹しく暮らしているわけではないだろう。

ヒトデ氏が言う「必要な情報は基本的に全部インターネットにというところに、一茶の句との共通性があるように感じた。
ヒトデ氏にとって「必要な情報」「インターネット」がくれたもの。
一茶の落葉も、「風がくれたる」焚き物なのである。

掲句に、ヒトデ氏の「必要な情報は基本的に全部インターネットに無料で落ちてました」をあてはめると、一茶の生活スタイルとヒトデ氏のブロガースタイルが重なりはしないだろうか。

「焚ほど」>ブログ(記事)を書く、あるいはブログを運営するヒントを得る。
「風」>インターネット。
「おち葉」>必要な情報。

インターネットから必要な情報を拾って記事を書くと言っても、ひところ話題に登った某キュレーションサイトのように、ほかのサイトから文章をコピーして記事をまとめているわけではないことは、「今日はヒトデ祭りだぞ!」を読めば明白である。

インターネットにあふれている多くのサイトからヒントを得ることによって、ヒトデ氏は自身のブログを発展させている。
「風がくれたる」ヒントなのである。
ネット界隈の噂話によると、そうやって発展させたブログからヒトデ氏は少なくない収益を得ているという。

ところで一茶は、自身の倹しい生活ぶりだけを、なかば説明的にこの句で表現したのだろうか。
「焚(たく)」とは燃やすことなのだが、それはもっぱら落葉とは限らない。
俳諧に対する創作意欲を燃やすというイメージも含んでいる。
それも「焚ほどは」なのだ。

一茶の作った句の数は、約22,000句とウィキペディア>「小林一茶」にある。
同ウィキペディアに与謝蕪村の作った句は、約3,000句とある。
松尾芭蕉の発句が全作収録されているという「芭蕉年譜大成(著:今榮藏)」には、芭蕉の作った句として981句があげられている。

蕪村や芭蕉に比べて、一茶の句の数が桁外れに多い。
その創作意欲の旺盛さを窺い知ることができる句の数であると思う。

掲句は、そういう一茶の創作方法を示した句でもあるのではないだろうか。

「焚ほど」>発句を詠む。あるいは創作意欲を燃やす。
「風」>自然一般。
「おち葉」>言葉。発句。

焚ほどは風がくれたるおち葉かな

一茶は、日本の古典を題材にして句を詠むというタイプではない。
暮らしや周囲の自然からネタを得て、句を詠んでいる。
そうやって、江戸時代に膨大な数の発句を残した小林一茶。
現代の日本で、月間100万PVという膨大なアクセス数を得ているヒトデ氏。

その生きている環境に応じて、似たような発想が両者に見られるところが興味深い。
そう私は感じている。
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