高齢者のキノコ採り遭難死

倒木の上にナラタケ。
今日もまた仕事で、山へ行けない。
「サモダシ食いたい病」はかなりエスカレートして、舌がヒクヒクよだれビロビロなのだが、仕事をしないとサモダシどころか、おマンマが食えない。
「古川の市場で売ってるべさ」とか、『たくさん採った知り合いからもらってきたら」とか、言われても、それじゃだめなんだよ。
自分の見つけた場所で、自分で採ったサモダシでないと、美味しく無いんだっ。

せめてキノコを採ってる夢でも見るべ、と思って寝たら、遭難してるっぽい夢を見てしまった。
キノコを採らずに、キノコにタマをとられちゃったのね、あくまで私の場合はね。
ところで、高齢者のキノコ採りの遭難死者が毎年出ているが、これは「事故死」なんだろうか「寿命死」なんだろうか。

高齢になって、薬くさい病院のベットの上で、苦しみながら亡くなる「死」もある。
天国のような、枯葉の心地良い山のなかで、「おむかい」が来たのを悟り、静かに目を閉じる、高齢な「死」もある。
山で死んでしまったら、遺族の方は大変だけど・・・・・・
 
  森の電車 

森の中で疲れたおじいさん
ホームにしゃがみ込んで電車を待っている
黒いコートを着た
たくさんの勤め人達といっしょに
遠い昔のように電車を待っている

待っていれば電車はくるはずさ
働いていれば幸せは逃げない
何かを探し求めていることが
生き甲斐というものだ

ガラス戸の灯
連れ合いの笑顔や子供たちの歓声 
リュックを手渡し
敷居をまたいで畳の上に寝転ぶ
安楽なひととき
かすかな胞子のかおり

森の中で眠くなったおじいさん
置き忘れたリュックにはたくさんのキノコ
地下足袋を脱いで革靴をはいて
書類鞄のホコリをはらい
電車を待っている

木陰が重なる闇の奥から
風の音のように
ホームに電車が入って来る
靴音とざわめきの上の
ぽっかりとした青空
白い雲

何か、忘れたかな・・・・・・・
いや、まだ何を忘れずにいるのかな・・・・・

走り出した電車
揺れるからだ
スピードを増して
キノコの入ったリュックと
老いた肉体から
遠ざかる

記憶の列を引っ張って
離れていく高速電車
億をこえる
数百分の1ミリの
おびただしい夢の飛散

吊り革を握りしめる
握りしめていることが生きているということさ
でも
少しだけ眠っていいかな
木漏れ陽の中の
森の電車

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