素人居酒屋の仕事感覚

以前、飲みに入った店に、「自分は素人だから・・・・」というのが口癖のママさんがいた。
 
口癖と言うか、私にはそれが耳障りな言い訳のように聞こえた。

そしてそれは、自身の仕事感覚の未熟さをカバーする「方法」にもなっている。

自分は、水商売は素人だから、居酒屋商売も下手で、お客をもてなして楽しませるのも下手で、料理の味付けが下手なのよ。
 
と言いながらも、その店の規定の料金を受け取る。
 
ボランティアでやっていれば素人だけど、料金を取るんだから、プロなんじゃないかな、と思ったものだ。
 
居酒屋商売という仕事をやっていながら、接客についても勉強しない、料理の味付けについても勉強しない。
 
居酒屋商売という仕事に対する自覚もなく、仕事の努力をすることが億劫だから、「素人」という安全地帯に立って、商売をしている人なのだなぁ、と感じたのだ。

それに、自分は「水商売は素人」だと言う時、「水商売=ずるい女」、「素人=善良な女」とでも言いたげな口調でいうのだから、面白い。

そう言う含みをもたせて強調するから、よっぽど自分の善良ぶりをアピールしたかったのだろう。
 
「水商売=ずるい女」という見方で職業を蔑視するものには、その職業のもっている社会的な意義が理解できない。
 
確かに善良そうな人だった。
 
でも、善良のお題目で、全てが問題解決とはいかない。

善良で、しかも仕事の腕が立つプロを求めて、自身の仕事に疲れたお客が、いっときの安らぎを求めてやってくるのだから。

お客さんは、それぞれの職業のプロがほとんどです。

そのプロが、居酒屋のプロの仕事を求めてやってくるのですから、「素人」のことばの影に隠れていても、そういうお客さんには通用しない。
 
看板掲げて、暖簾を下げて、赤提灯まで下げているんだから、ちゃんと仕事しろよ、と仕事で疲れたサラリーマンは、心の底で叫ぶ。
 
それでも、しばらく続いていたのは「素人仕事」に寛容な時代になったからだろうか。
 
やがて閉店するに至ったのは、「素人仕事」は飽きられるという結果だったのか。
 
昔程難しいお客さんはいなくなったからと、今のお客さんは行儀が良いからと、素人商売に手を出す「にわかママさん」の出現は後を絶たないようです。
 

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