龍のイラストと理髪館の中年マダム
育毛的な龍のイラスト
例の理髪店の女店主から電話がありました。
「あんた、絵が上手いから、龍のイラストが入った育毛のポスター作ってくれないかしら」
来年は辰年だから、毛のふさふさした強そうな感じの龍のイラストを描いてくれないかという電話でした。
彼女の経営する理髪店の、育毛サービスの宣伝に使いたいということなのです。
同じ干支でも、虎とかウサギなら写真がたくさん出回っているから、それを模写すれば割と容易にイラストに仕上げる事ができますが、架空の動物(?)である龍となると話は違ってきます。
たしかに龍のイラストのなかには、獅子のように大量のロングヘアを風になびかせているものもあります。
でも、龍は現実の動物(?)ではないので、育毛サービスそのものも架空のものなんじゃないというイメージをお客さんに与えかねないのでは、と理髪館の中年マダムに申しました。
女主人は、肉付きの良い腰を揺すって笑っています。
電話での話なので、彼女の姿は見えないのですが、彼女がよくする格好なので、その映像は想像出来ます。
腰を揺すって笑っている大柄な女性の後ろ姿。
「育毛は私の腕でバッチリだから心配ないわよ、なんなら、あんたの頭で証明してみせましょうか」
彼女はそう言って、また大声で笑い出します。
電話の受話器から彼女の口が飛び出しそうな勢いの笑い声です。
その口に呑み込まれてしまいそうな吸引力のある声音が、受話器から私の耳にまとわりついて、私の肌がざわついたほどでした。
仕事だから、なんとかやってみるよと言って電話を置きました。
「辰年だから、思いっきり起っている強そうな龍をお願いね、ふふん。」
終わりがけに彼女は、小さな声で悪戯っぽくふふんと囁いた後、また自虐的な笑い声とともに電話を切ったのでした。
例の理髪店の女店主から電話がありました。
「あんた、絵が上手いから、龍のイラストが入った育毛のポスター作ってくれないかしら」
来年は辰年だから、毛のふさふさした強そうな感じの龍のイラストを描いてくれないかという電話でした。
彼女の経営する理髪店の、育毛サービスの宣伝に使いたいということなのです。
同じ干支でも、虎とかウサギなら写真がたくさん出回っているから、それを模写すれば割と容易にイラストに仕上げる事ができますが、架空の動物(?)である龍となると話は違ってきます。
たしかに龍のイラストのなかには、獅子のように大量のロングヘアを風になびかせているものもあります。
でも、龍は現実の動物(?)ではないので、育毛サービスそのものも架空のものなんじゃないというイメージをお客さんに与えかねないのでは、と理髪館の中年マダムに申しました。
女主人は、肉付きの良い腰を揺すって笑っています。
電話での話なので、彼女の姿は見えないのですが、彼女がよくする格好なので、その映像は想像出来ます。
腰を揺すって笑っている大柄な女性の後ろ姿。
「育毛は私の腕でバッチリだから心配ないわよ、なんなら、あんたの頭で証明してみせましょうか」
彼女はそう言って、また大声で笑い出します。
電話の受話器から彼女の口が飛び出しそうな勢いの笑い声です。
その口に呑み込まれてしまいそうな吸引力のある声音が、受話器から私の耳にまとわりついて、私の肌がざわついたほどでした。
仕事だから、なんとかやってみるよと言って電話を置きました。
「辰年だから、思いっきり起っている強そうな龍をお願いね、ふふん。」
終わりがけに彼女は、小さな声で悪戯っぽくふふんと囁いた後、また自虐的な笑い声とともに電話を切ったのでした。