葉の陰に、小さなバナナのようなカツラの果実
カツラの果実。 |
公園のカツラが実をつけた。
青い小さなバナナのような可愛い果実だ。
果実は葉の陰に隠れて、葉と同じ色をしているので目立たない。
マメのような、細長い鞘(袋)を持った実だが、カツラの木はマメ科ではない。
カツラ科カツラ属の樹木。
葉の形がハート形の、カツラの葉に似た葉を持つ樹木にハナズオウがある。
ハナズオウの葉はカツラよりもツヤがある。
こちらは、マメ科の樹木。
マメ科特有の花の形をしていて、濃いピンクの艶やかな色の花を咲かせている。
花が終わるとハナズオウはインゲンによく似た実をつける。
カツラとハナズオウは、ひとつふたつ、似たようなところがあるが、違う仲間。
葉が似ているからって同類と思わないでくれ。
両者は、そう主張する。
花が違うし実が違うってことは、生き方が違うってことさ。
子どもの頃、風に揺れる木の葉の音を、木の言葉だと思ったことがあった。
蝉が鳴き止んだ一瞬、静寂の木陰の下で、よく木の言葉を聞いた。
「おまえ、木の声が聞こえるのか?」
いつの間にそばに来たのか、汗を拭いながら、祖父がたずねる。
「うん、少しね。」
それが普通であるように、少年がこたえた。
「うん、うん・・・」
かつて木の声を聞いていた祖父がうなずく。
メルヘンの世界に、木は欠かせない存在。
樹木は、様々なイメージの陰影を私達の生活に落としている。
カツラの葉がつくってくれる涼しい木陰にいると、そんな空想が湧いてくる。
少年も老人も、木陰で物思いにふける。
その物思いに、傍らの木が語りかけても、なんの不思議も無い。
葉の陰にカツラの果実。 |
カツラ。 |