両腕の肌の上を、小さな虫が這い回っているような感じ
【腕の肌。】 |
半袖シャツを着るようになってから虫が出現
夏になって暑くなると、床屋へ行く回数が増える。髪の毛が伸びて、その先端が汗で肌にひっつく感じが暑苦しいのだ。
それは、とてもうっとうしい暑苦しさ。
そのストレスが、熱中症のトリガーになるやもしれない。
半袖を着るようになってからは、両腕の肌の上を小さな虫が這い回っているように感じることがたびたびある。
老人性掻痒症か?
年齢のせいで、日焼けするとそうなるのか・・・・・・。そのことを、散髪中に理髪館のマダムに話すと。
彼女は、「それは、もちろん年齢のせいね。」と言った。
「あれよ、あれ、老人性ナントカね。」
老人性掻痒症。
「若い若いと思っていたら、もう老人なのね、ロージン、うひゃ、うひゃ、うひゃ。」
例によって女主人は、豊満な腰をよじって、あやしい大笑いを発している。
顔を天に仰け反らすようにして笑うので、理髪館の鏡を通して見ると、胸のあたりが揺らいでいる。まるで体全体が「笑う楽器」。
「でも、老人性ナントカのわりには、肌がそんなにカサついていないわねぇ。」
と彼女は、スピード感のあるハサミさばきで私の頭の上を走り回る。
ウサギを追い回す猟犬みたいに。
虫の正体は抜け毛
「ひょっとしたら、これかも。」そう言って彼女は、何かを私の左腕の上に落とした。
すると、腕の上を小さな虫が這い回る感じがよみがえる。
「犯人は髪の毛でした。うひゃ、うひゃ、うひゃ。」
一通り笑い終えてから、彼女は説明しだした。
「つまり、頭の上からの抜け毛がね、あなたの腕の上にはらりと落ちるわけね。」
「これが虫の正体、虫は虫でもハゲの虫ね。うひゃ、うひゃ、うひゃ。」
「腕の上に落っこちた髪の毛を、虫と感じるんでしょうねぇ。ひょっとしたら、寄生虫妄想でもあるんじゃない。」
彼女にとって、友人の弱点を見つけるのはこのうえもなく愉快なこと。
彼女はそのポイントに機関銃を連射する。
「そういえば、この頃、薄くなってきたわねぇ、頭頂部」
「ハラリハラリと舞い散るハゲの虫が、あんたの腕の上を這い回っているのよ。」
老人性掻痒症はともかく、寄生虫妄想ではないかと思っていたが、髪の毛だったとは。
それも抜け毛が犯人とは。