孫の幼児語を理解する嫁と、理解出来ない姑
この頃、1歳半の孫娘が、よく彼女に話しかけてくる。
手におもちゃのボールを持って、「バッチャ、ドンジョ。」と差し出す。
手におもちゃのボールを持って、「バッチャ、ドンジョ。」と差し出す。
これは「おばあちゃん、どうぞ。」のことで、孫が彼女にボールを渡してくれるということ。
今度は、彼女が「マーちゃん、どうぞ。」とボールを孫に差し出す。
孫は「ドンモ」と言って、小さな可愛いおててでボールを受け取る。
物を渡したり受け取ったりする幼児の遊びなのである。
彼女が雑誌を読んでいると、後ろから孫がトコトコと近づいてきた。
「バッチャ、アアイ、ブーブ、ゴゴッタ。」としきりに話しかけてくる。
目をクリクリさせながら腕を踊らせて、うれしそうに「バッチャ、アアイ、ブーブ、ゴゴッタ。」を繰り返す。
彼女は、よく聞き取れないので「え、マーちゃんなぁに?」を繰り返すばかり。
すると、その様子をうかがっていた嫁が近づいてきて、「『おばあちゃん、赤い自動車がゴーゴーして行ったよ。』って言ってるんじゃないかしら。」
と言って、自分の娘に「お外を赤い自動車がゴーゴーしたね。」と話しかける。
彼女の孫は「ブーブ、ゴゴッタ。アアイ、ブーブ、ゴゴッタ」とうれしそう。
「マーちゃんは、赤い色が好きなのよね」と嫁が、孫にともなく、姑にともなく話しかけている。
よく解るもんだね。
まあ、母親だから解って当然ね。
一緒にいる時間も長いしね。
と、彼女は、感心しているやら、妬んでいるやら。
その感想の行き着く先は・・・。
そんなに解っているなら、靴を脱ぎっぱなしにしたり、食器をテーブルに置きっぱなしにしたり、誰もいない部屋のテレビをつけっぱなしにしないでちょうだい、というところ。
おばあちゃんは、なんだか、急に不機嫌になってきた。
小さな娘の言うことを聞き分ける嫁と、孫の言うことを聞き分けられない姑の間に、しばしの沈黙。
子どもは、可愛い後ろ姿を見せて、外を眺めている。
新しい発見に夢中という様子。
この孫から見れば、嫁も婆さんも、老いた感性のかたまりなのだ。
幼子から見れば、嫁も姑も大差無いのかもしれない。
幼子に癒されて、おばあちゃんは、ちょっと達観した気分になった。