アオモリトドマツ(オオシラビソ)の悲運な植樹
青森市平和公園のアオモリトドマツ。 |
平和公園のアオモリトドマツ
右の写真は青森市の平和公園に植えられたアオモリトドマツ。
大きなケヤキのそばに、縮まって立っている。
このアオモリトドマツの根元に角柱の看板があって、どこかの労働組合が記念に植樹したと記されている。
私はこのアオモリトドマツを7〜8年見かけているが、背丈はほとんど変わっていない。
あまり成長していない様子。
八甲田山のアオモリトドマツ
アオモリトドマツ(オオシラビソ)は、中部地方から東北地方の、亜高山帯に自生している樹木。
八甲田山では、標高900メートルを過ぎた辺りから見かける。
酸ヶ湯温泉の裏山付近の高さだ。
その辺りでは、背丈が2〜3メートルぐらいの小さなアオモリトドマツが、ブナやダケカンバの樹木の陰にちらほら見える程度である。
標高1,100メートルぐらいまで上がると、アオモリトドマツの純林が形成されている。
そこでは、背丈が4〜6メートルぐらいの比較的大きなものを見ることができる。
それでもアオモリトドマツとしては小さい方らしい。
下の、樹氷になりかかったアオモリトドマツの写真は、今年の1月19日に酸ヶ湯温泉から地獄沢のあたりまでスキーハイキングしたときに撮ったもの。
北アルプス栂池平付近のアオモリトドマツ(オオシラビソ)の樹林では、高さが30メートルになる巨木も見ることができるという。
八甲田山のアオモリトドマツが小さめなのは、吹き荒ぶ寒風が厳しいから。
八甲田山の気象条件は厳しいが、そこに広大なアオモリトドマツの純林があるのは、八甲田山の高山帯が生育環境に適しているからだろう。
樹氷になりつつある八甲田山のアオモリトドマツ。 |
生育環境の違い
青森市の平和公園に植えられたアオモリトドマツの苗木には、厳しい環境でも成育するこの樹木にあやかろうという植樹者の気持ちが込められていたのかも知れない。
労働環境の悪化に抗して、労働組合を大きく育てようという願いが込められているのかも知れない。
しかし植物は、厳しい環境に抗して成育するのではなく、成育に適した環境のなかで強く育つのだと思う。
アオモリトドマツにとって青森市の平和公園は成育に適していない。
亜高山帯に自生する樹木を、平地に持ってきても、大きくはなれないだろう。
残念ながら平和公園に植樹されたアオモリトドマツは大きくならない運命にある。
悲運な植樹なのだ。
どんどん大きくなるケヤキの大木の陰で身を縮めるばかりだろう。
モヤヒルズのアオモリトドマツ
モヤヒルズのアオモリトドマツ。 |
上の写真はモヤヒルズのスキーコースの下に植えられたアオモリトドマツ。
先日の2月16日に雲谷峠BCにスキーハイキングしたとき撮ったもの。
この辺は標高250メートルぐらいだが、なんとか育っている感じだ。
青森市の雲谷スキー場がモヤヒルズに変わって、施設を新しくした際に植樹されたものらしい。
以前、夏にこの木を見かけたときは、モミの木かなと思ったが。
雪を被った樹影がアオモリトドマツそっくりだったので、モヤヒルズの職員の方に電話で問い合わせてみたら、アオモリトドマツであるということだった。
スキー場は吹きさらしなので、強風で新雪が吹き飛んでしまわないように、防風のために植えたというお話だった。
市街地のすぐそばのスキー場を、高山的なものに演出するためということも、植樹の目的のひとつとしてあったのではなかろうか。
割と大きく育っている姿を見ると、モヤヒルズの環境の方が、まだ平和公園よりもアオモリトドマツにとって適応しやすいのではと思えてくる。
平和公園のアオモリトドマツは、労働組合の観念を植え付けられて、細々と立たざるを得ない悲運に見舞われている。
モヤヒルズのアオモリトドマツは、スキー場運営者のビジョンを植え付けられ、高山風を吹かしてそこに立っている。