2014/04/16

日本駄右衛門の「おこがましい」という態度

歌舞伎を見学に行く


日本駄右衛門の名台詞 

「問われて名乗るもおこがましいが・・・」という歌舞伎の「口上」がある。
演目「白浪五人男」(通称) に登場する日本駄右衛門という大盗賊の名台詞となっていて有名だ。
私は、その台詞の「おこがましい」の意味を長いこと知らなかった。
意味も知らないくせに、その文句はよく覚えていた。

「おこがましい」の意味

 調子の良い文句は「音楽」のように、記憶に残るものなのだろう。
「問われて名乗るも」は「尋ねられて自分の名を言うのも」というほどの意味と思っている。
次の「おこがましいが」は、上記前半の文句と違って、日常ではお目にかからない言葉。
「おこがましい」は、「楽しい」とか「悲しい」とかと同様の「しい」が付いているので、感情を表す形容詞のようである。
「問われて名乗るもおこがましいが・・・」という文章の流れから、そう感じとれる。
「尋ねられて自分の名を言うのも恥ずかしいが・・・」だろうか?
「尋ねられて自分の名を言うのも悲しいが・・・」だろうか?
感情を表す形容詞の、いろいろ知っている言葉をあてはめても、しっくりくるようでしっくりこない。
ということで、ネットで調べてみた。

「おこがましい」の意味は、YAHOO辞書では以下の通り。
(1)身の程をわきまえない。差し出がましい。なまいきだ。
(2)いかにもばかばかしい。ばかげている。




名乗る理由

この「口上」は「稲瀬川勢揃いの場」という場面で発せられる。
5人の大泥棒たちは、舟で逃れるために稲瀬川(いなせがわ)の土手に勢揃い。
土手の桜は満開。
しかし、捕り手に囲まれてしまう。
捕り手は、網を張って待っていたのだ。
それでもひるむことなく、各人が名乗りを上げ、捕らえられるものなら捕らえてみよと見得を切る場面。

その一番最初の名乗りが、この「問われて名乗るもおこがましいが」で始まる日本駄右衛門の台詞。
すでに捕り手に囲まれているのだから素性は知られているはず。
なのに、「尋ねられて自分の名を言うのも・・・」はおかしい。
ここで捕り手が、お前達、あらためて名前を名乗れと命じたのか?
日本駄右衛門は、この状況で今さら名乗るのもばかばかしいと思い、 「問われて名乗るもおこがましいが・・・」と啖呵を切ったのだろうか。
とすれば、「すでに知られているのに、尋ねられて自分の名前を言うのもばかばかしいが、お望みなら一応言ってやる・・・」というような意味になる。

自己嘲笑

自発的な自己紹介なら「問われて・・・」とはならないから、やはり捕り手に指図されて名乗りを上げたのだろう・・・。
しかし、YouTubeでこの場面をよく見ると、名乗りは、自発的な自己紹介なのだ。
「・・・卑怯未練に逃げやしねえ、ひとりびとりが名を名乗り・・・」と盗賊側が台詞を言っている。
問われてもいないのに、問われてでもいるように名乗りを上げる。
その一瞬に「見得」を切るということなのか。
「尋ねられてはいないが、敢えて尋ねられてでもいるように自分の名前を言うなんてばかばかしいことだが・・・」という破れかぶれの自己嘲笑なのだろうか。

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