春の枯葉は、だんだん若草の陰になって分解していくのだろう

雪が融けた後の公園の枯葉。
すっかり雪が融けて消えてしまった公園に、春の枯葉が散在している。
去年の秋の残骸であるこの枯葉は、これからどうなっていくのだろう。

戯曲「春の枯葉」
太宰治の戯曲に「春の枯葉」というのがある。
以下は、この劇の主要な登場人物である「野中」という 36歳の国民学校教師の、第一場のセリフを抜粋したもの。
 「しかし、雪の下から現われたのは青草だけじゃないんだ。ごらん、もう一面の落葉だ。去年の秋に散って落ちた枯葉が、そのまんま、また雪の下から現われて来た。意味ないね、この落葉は。(ひくく笑う)永い冬の間、昼も夜も、雪の下積になって我慢して、いったい何を待っていたのだろう。ぞっとするね。雪が消えて、こんなきたならしい姿を現わしたところで、生きかえるわけはないんだし、これはこのまま腐って行くだけなんだ。(菊代のほうに向き直り、ガラス戸に背をもたせかけ、笑いながら冗談みたいな口調で)めぐり来(きた)れる春も、このくたびれ切った枯葉たちには、無意味だ。なんのために雪の下で永い間、辛抱(しんぼう)していたのだろう。雪が消えたところで、この枯葉たちは、どうにもなりやしないんだ。ナンセンス、というものだ。 」
これを聞いて「菊代」という女性が声を立てて笑ったのに対し、「野中」のセリフは続く。
いや、笑いごとじゃありませんよ。僕たちだって、こんなナンセンスの春の枯葉かも知れないさ。十年間も、それ以上も、こらえて、辛抱して、どうやら虫のように、わずかに生きて来たような気がしているけれども、しかし、いつのまにやら、枯れて落ちて死んでしまっているのかも知れない。これからは、ただ腐って行くだけで、春が来ても夏が来ても、永遠によみがえる事がないのに、それに気がつかず、人並に春の来るのを待っていたりして、まるでもう意味の無い身の上になってしまっているんじゃないのかな。
びっしりと積もった春の枯葉。
残骸のイメージ
戯曲では、春の枯葉は、腐り果ててしまう人間のように意味のないものとして扱われているようだ。
もっとも、その扱いは、以下のように二通りに受け取れる。
(1)「僕たち」と表現しているこの時代を生きている人間を、「枯れ落ちて死んでしまって」いる「春の枯葉」に例えているのか。
(2)「春の枯葉」を、「意味のない身の上になってしまっている」人間に例えているのか。
いずれにしても、「春の枯葉」という残骸のイメージを借りて、この戯曲の骨組みが仕上がっているように、私には思われる。
太宰治の戯曲では、「春の枯葉」は 、エチルアルコールだかメチルアルコールだかを酒の代用品として飲んで、若き日の希望がよみがえることもなく、ただ腐って死んでいく存在なのだ。

枯葉の分解
戯曲の世界ではそうであっても、現実の公園ではどうだろうか。
暖かくなって、ミミズやダニ類の活動が盛んになっている。
雪から解放された枯葉をよく見ると、だいぶほぐれて、縮まったり砕けたり欠けたりしていて、秋の落ち葉の面影はない。
「分解」が進んでいるのだ。

吹き溜まった春の枯葉。

枯葉の隙間から若草が生え出した。
公園の、人の通り道以外では、戯曲にある「青草」が茂り出した。
この若草の背がだんだん伸びてきたら、枯葉は草陰に姿を消すに違いない。
草陰で、ダニ類やミミズ達の餌になって分解を速めることだろう。
その後、発酵菌や腐敗菌によって、より微小に分解されていく。
かつて有機物であった枯葉が、無機物の二酸化炭素や窒素化合物に分解される。
こうして、春の枯葉は土の一部になって、草や木々に栄養を与えることになるようだ。
おそらく今年の秋頃には、この「春の枯葉」は枯葉としての形をとどめていないだろう。

自然現象
その上に新しい枯葉が降りそそぐ。
「自然現象に無駄はない」とはどなたの言葉だったか。
しかし、人間のドラマは「自然現象」では無い。
戯曲「春の枯葉」的な一面も、有り余るほどあるように思われる。
自然現象に例えた人の暮らしぶり。
人間は、自然から何かを借りる事が多いような気がする。

だんだん若草の陰になっていく枯葉。

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