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雪融け水が流れる小沢で、エゾノリュウキンカが咲いていた

2022/05/30
小沢に咲いていたエゾノリュウキンカ。


この時期に、こんなところで花が咲いているなんて。
そこだけ季節が、ちょっと早く進んでいるような。
回りは一面雪だが、小さな沢筋に沿って地面が顔を出している。
残雪の山中に嵌め込まれた里の小川のような風景。
逆川岳(さかさがわだけ)の山腹の小沢で、エゾノリュウキンカの花を見つけた。
雪融け水が流れ込む沢の岸で鮮やかに咲いている。

残雪の沢に黄色い花
5枚の、花びらのように見えるものは、実は萼片であるという。
葉が蕗(ふき)に似ているが、蕗の仲間ではない。
キンポウゲ科リュウキンカ属の植物。

すっかり雪が融けてしまった南八甲田横沼周辺の湿地で、エゾノリュウキンカの群生を見たことがある。
晴れた日は、鮮やかな黄色が光り輝いて、花の群れを見事に彩る。

まだ雪が残っている時期に、エゾノリュウキンカを見たのは初めて。
ブナの小さな若葉が森をうっすらと緑色に染める。
雪融け水の、沢を流れる音が、森の中を賑やかにする。
沢の岸辺には、鮮やかな色合いのエゾノリュウキンカ。
こんな出会いが、山歩きをいっそう楽しくする。
山へ来て良かったという思いが湧く。
山の彩りが、登山者の気持ちを新鮮にする。


黄色いと緑の鮮やかさ。


まだ蕾。


別世界とすれ違う
この花は清流を好むと図鑑に書いてある。
山の清らかな沢岸や湿地という、限られた環境でしか育たない植物であるらしい。
山に雪が残っている状態で花開くのだから、たくましい花のように見えるのだが。
自然の山の厳しい環境にはたくましいが、環境の変化には弱いのだろう。

人間は環境の変化に強い生き物。
さまざまな環境に、興味と意欲をもって対応していくからだろうか。
豊かな好奇心それ自体を環境として、その中で行動できるからだろうか。
好奇心や探究心という、世界の各所に持参できる自己の環境を、リュックに入れて、歩いているからなのか。

しかし、山奥の清冽な環境の中でひっそりと暮らしているエゾノリュウキンカを見て、人の暮らしは、なんてあわただしいのだろうとは思わないことだ。
人間とは別の次元の、時間の中で暮らしているのだから。
人間は人間で、人の暮らしのあわただしさを楽しめばいいんじゃない。

エゾノリュウキンカの花は、そんな顔をしている。



徐々に花開く。


残雪の厚さは1メートルぐらい。
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