羊羹(ようかん)の「よう」は、なぜ「羊」なのか

羊羹は羊と関係があるの?。
常連となっている居酒屋で飲んでいると、羊羹屋のオヤジが入ってきた。
暖簾をハゲ頭でくぐって、後ろ手にガラス戸を閉める。
彼特有の入店スタイル。
風にはためいていた暖簾が、ハゲ頭に乗った雪片を少しはらった。

羊羹屋のオヤジとは、居酒屋の近所にある和菓子店の店主。
ウィンドウに羊羹の大きなポスターが、いつも貼られているから、羊羹屋のオヤジと呼ばれるようになった。

「チェ、寒いなぁ・・・」
店に入るなり愚痴るのも、毎度のスタイル。
だから、誰も相槌を打たない。

「今年は未(ひつじ)年だってのに、やたら寒いよなぁ」と羊羹屋のオヤジ。
「未年だと、どうして寒いのがいけないんだよ。冬は寒いに決まっているじゃないか。」と酔客。
「だって、羊って、いっぱい毛をまとって温かそうでしょう。」とオヤジは、ハゲ頭をなぜながら言った。
「だから、未年は、すごい暖冬でなくっちゃいけないのよ。」

「じゃ今年は、毛を刈られて丸裸になった羊の年なんじゃないか。」と酔客。
「あ、そうなんだ。どうりで寒いわけだね、はっはっは。」
羊羹屋は、寒空の下で丸裸にされて、ふるえている羊を想像して、急に可笑しくなった。
大笑いに揺れるハゲ頭。

「ところで羊羹屋さん。」
酔客が、妙なことを思いついた。
『今年が未年だから尋ねるんだけど、じゃ、どうして羊羹の「よう」は「羊」って字なんだい?』
「へっ?」とハゲ頭。
「チェ、そうだっけ?」

『あ、おまえさん、じゃ「ようかん」が「羊羹」だってこと知らないのかい、羊羹屋のくせに。』と酔客。
「チェ、そんなこと知っとるわい。」
『じゃ「羊羹」って漢字、書けるよね。書いて見せてよ。』と酔客。

「おう、書けるとも。だけど俺は、酒飲んでる時は、クルマの運転と文字書きはしないことにしてるんだ。」
「へぇ・・・・、そいつは本当かね。じゃ、羊羹って漢字に、なんで羊を当てるのか。羊羹屋だから知ってるんだろうね。」
この酔客「じゃ」を連発するようになると、相当酔っている証拠。
おまけに、酔うと絡む癖がある。
私も何度か、絡まれたことがある。

そこで私が口をはさんだ。
「そんなこと、羊羹屋だけに、ようかんがえたこともない。」
一同大笑いになるやと思ったが、ダジャレが通じない。

酔客は、チロチロ蛇の舌のように、「じゃ」「じゃ」を繰り返して収拾がつかない。
一方、羊羹屋はというと、「チェチェ」と愚痴りながら、密かに漢字の書き取り練習を、頭の中でしている。
「洋甘」などという漢字を思い描いたりしている。

なるほど、「洋甘」にも「羊」の漢字が使われているよね。
チャンチャン。

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