蔦植て竹四五本のあらし哉

蔦はブドウ科の植物。
蔦の幹はつる性で、どんどん伸びる。
幹から出ている巻きひげの先端が吸盤になっている。
その吸盤で、樹木や壁を「伝う」ことから「つた(蔦)」という名前になったとのこと。
山ブドウの葉同様に、秋の紅葉が美しく、冬には落葉する。

(つた)(うえ)て竹(たけ)四五(しご)本のあらし哉
松尾芭蕉

前書きに「閑人の茅舎をとひて」とある。
「閑人(かんじん)」とは、俗世間を離れてわび住まいする風流人のこと。
「茅舎(ぼうしゃ)」とは、茅葺きの家のこと。

「野ざらし紀行」の旅の途中の句である。
この句は、俗世間を離れて生活している風流人の、茅葺きの家を芭蕉が訪ねたときに作られた。

芭蕉が訪ねたとき、秋の強風が吹いていたのだろう。
強風に苦労しながら歩いている芭蕉の目の前に、蔦と竹があるだけの庭と茅葺きの簡素な家があった。
それは「閑人の茅舎」としての趣を充分に備えていた。
芭蕉好みだったのだ。
芭蕉が、ここが目的の庵だと知ったとき、一句が湧いて出た。

「蔦植て竹四五本のあらし哉」
この嵐に苦労してここまでたどり着いたのに、この簡素な庵にとっては、4~5本ある竹を揺らす程度の嵐なのだ。
「閑人の茅舎」とは、こうも世間から隔てられているものだろうか、というイメージ。

蔦が絡まっている竹が4~5本あるだけの小さな庭を嵐が吹き抜けているという情景の句だが、その庭の奥に建っている簡素な庵の存在が感じられる句であると思う。
さらに言えば、庵の住人である「閑人」の人柄も、「蔦植えて竹四五本」から察せられる。
この簡素な庵のなかでの芭蕉と「閑人」の歓談も目に浮かぶようである。

芭蕉は「野ざらし紀行」の旅から帰って2年のち、以下の句を作っている。

「ものひとつ我が世は軽き瓢哉」

芭蕉の脳裏に、「閑人の茅舎」があったか無かったか・・・・・。

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