雑談散歩

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おだやかなブナの森から荒々しい樹氷の森へ、北八甲田前岳スキーハイキング

本日の行程図(赤色点線:登り、水色線:下り。行程線はブログ管理人の書き込み)。出典:国土地理院ホームページ。
この前歩いた北八甲田前岳の山麓へ、また出かけた。
今回は、フォレストコースを登らずに、コンパスを合わせて深雪ラッセルに終始した。

天候は曇り。
雪の深さは、40センチ~50センチ。
八甲田にしては、やや重い感じの雪質だった。

一般に、前岳でのスキー滑降コースは、前岳北斜面が利用されることが多い。
銅像茶屋へ向かって、無立木の前岳大斜面でのスキー滑降を楽しむことが出来るからだ。
春スキーで「銅像コース」と呼ばれているルートである。
前岳の斜面を過ぎてからの、林間の長い緩斜面も、スキーが走れば、それなりに面白いコースである。

フォレストコースのゴールから登り始める。
その北斜面の景色は、何度か眺めているので、今回は違う景色を見ようと、前岳の西斜面ルートを選んだ。

山は方角によって違う表情を見せる。
ひとつの山を、いろんな方向から眺めるのも山を歩く楽しみのひとつ。
積雪期でなければできない楽しみである。

冬山の単独行動であるから、出かける前には、不安な気持ちが無いこともない。
単純なルートなので、方角を違えることはまずない。
だが、スキー滑降途中で怪我をしたらどうしようとか、吹雪にまかれたらどうしようとか、いろいろな心配事が頭に浮かびあがる。

不思議なことだが、そんな心配事は、歩きはじめると消えてしまう。
雪の山が楽しくてしょうがないという気分になってくる。
「深雪ラッセル・ハイ」なのか。
未知の景色を追いかけて、心が躍るのか。

9時に、フォレストコースのゴールである田茂萢沢橋(標高690メートル)を出発。
コンパスを52度に合わせて、フォレストコースを横切る。
雪藪が深い。

ルートは、標高750メートルあたりまでは、適度な斜面となっている。
私の選んだルート(51度)は、フォレストコースと付かず離れずになっているようである。
登っていると、時々、フォレストコースを滑る若者たちの歓声が聞こえる。
カラフルなスキーウェアが見える。
それでも、コースを登らずに、深雪ラッセルに固執した。
お馬鹿な雪山ハイカーであることが楽しいのだ。

雪の深さは40~50センチ。
標高750メートルあたりで、登りの斜面が平坦な地形になった。
フォレストコースに最接近している。
ここまでの経過時間は50分。
脚が雪藪ラッセルに慣れてくる。

微妙な斜度の、おだやかな森が続く。
このあたりから、ブナの木がだんだん太いものに変わってきた。
木々の間隔も混んでなくて、広い。
おそらく、雪の下にはネマガリタケの群生があるのだろう。
ブナの森の中の、雪の広場になっているところは、ネマガリタケの群生地か湿原であると思われる。

10時40分、標高800メートル地点。
ここで予定通り、コンパスを100度に変える。
相変わらず地形は平坦である。

昨夜の降雪が木の枝に貼りついている。

進むほどにブナの木が太くなる。
時刻は11時。
登り始めてから2時間が経過している。
標高850メートルあたりで、赤い三角看板(下の写真)がブナの木に取り付けられているのが目に入った。
白と黒の森の中で赤い色の看板はよく目立つ。
「さくらフィルム」という文字が大きな数字の下に記されてある。

これが噂に聞いた「梅津コース」の標識板。
「梅津コース」とは、昭和26年3月に八甲田で遭難死された山岳スキーヤー梅津又四郎氏が生前に開拓したコースである。
尚、この赤い標識板は氏が亡くなられてから取り付けられたものであるという。
偶然にも、150番は、「梅津コース」の終点番号。
その先は「田茂萢コース(100番コース)」と合流するとのこと。

フォレストコースと交差する「梅津コース」の赤い標識板。さくらフィルムの文字が見える。150番は「梅津コース」の終点番号である。
標高910メートルあたりを過ぎると、平坦に見える地形から、徐々に緩い傾斜が始まる。
標高1050メートルを12時30分に通過。
斜面がだんだん急傾斜に変わっていく。
林間ではあるが、開けた斜面が続く。

徐々に傾斜が出てきた。

まだ雪は深い。

開けたブナの森。
標高1070メートルあたりで、それまで空を覆っていたガスが消えて、下界が見渡せた。
心躍る一瞬である。
時刻は、12時45分。
もうそろそろ、歩き始めて4時間になろうとしている。
終い時である。
それにしても、雪山を歩いていると、なんと時間の過ぎ去るのが早いことか。

ガスがとれて下界が見えた。
13時を刻限として歩みを進めると、前方に樹氷の森が見えた。
ブナの森と樹氷の森の境目で時刻は13時。
標高は1100メートルちょっと。

樹氷の森からは、長い吹き溜まりの折り重なりで構成されている急斜面が続く。
下からうかがっても、荒々しい印象である。
そういう森も歩いてみたかったが、時間も体力もない。

北八甲田前岳の西面は、冬の北西の季節風が直撃する場所。
標高が上がるほどに、厳しい面持ちが予想できる。

4時間の深雪ラッセルで私がやっと到達した世界。
そんな世界を垣間見たのだから、今日は充分である。

前方に樹氷(アオモリトドマツ)の異形な森が見えた。

雲谷峠の向こうに、青森市街と陸奥湾が見える。
パウダー滑降は、滑り出しから数十メートルのみだった。
後の緩斜面は、直滑降でもスピードの出ない深雪。
下りのラッセルも有りで、滑降開始からゴールの田茂萢沢橋到着までに1時間ちょっとを要した。

今日は、重い深雪に苦労した北八甲田前岳スキーハイキングだった。
だが、おだやかなブナの森から荒々しい樹氷の森へのスキー散歩は、独特な感じで、なかなか楽しかった。

重い深雪ターン。

ブナの森におだやかな青空。

午後2時の静かなスキー場。

帰路の萱野高原自動車道路から、晴れあがった北八甲田前岳を眺める。

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