雑談散歩

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温泉銭湯の浴場でウンチをもらしてしまった老人

久しぶりに市内の温泉銭湯へ行ったときのことである。
脱衣場に入ると、浴場から出てきたマッチョな若い男を見かけた。
その方は、労働やスポーツで筋肉が発達したというよりも、筋トレで筋肉細胞を増殖させたというタイプに見えた。
この方ほどではないが、かつての若かった私も、現場労働やスポーツで自然と筋肉が付き、ミニマッチョだった時代があったなぁなどと思いながら浴場へ入った。

浴場には、休憩用の白いプラスチック椅子が置いてある。
その椅子に、体を傾げて座っているご老人がいた。
年齢は80歳前後。
胸の肋骨が浮き出ているほど痩せこけている。
手足も細い。
頬に肉は無く、目は落ち窪み、生気のない表情で虚空に目をやっていた。

と、その老人がよろよろと立ち上がり、転びそうになりながら露天風呂の方へ歩いて行く。
通路のガラスにぶつかりながら。
怖い光景であった。
もし老人が転んでガラスに激突したら、ガラスが割れて・・・・・。
ハラハラしながら見ていたが、無事に通路を渡りきって、露天風呂へとたどり着いたようだった。

今日は、極端に対照的なふたりの人間を見てしまったなぁ、などと思いながら風呂につかった。
のんびりお湯に入って体を温め、リラックスした気分で洗い場に向かったとき、またあの老人が目に入った。
露天風呂への通路の入口で、傍の湯船から洗面器にお湯をすくって、それをタイルの床に何度も浴びせている
老人が湯をかけている床に目を移すと、かけたお湯におされて排水溝へと移動していくウンチがあった。

ああ、この爺様は「大」のおもらしをしてしまったのだ。
露天風呂でお腹を冷やしてしまったのだろうか。
露天風呂から浴場へもどるとき、こらえきれずに・・・・。

数日経ってから、このことを知人に話したら、高齢者が多い銭湯ならありがちなことだという。
知人は、さらに言う。
その老人は、まだましな方だと。
肛門括約筋が緩い爺様や婆様は、出たことに気がつかずに、そのまま去ってしまうという。

「歳をとれば誰にでも起こり得ることかもしれないねぇ。」
私と同年齢の彼はつぶやいた。
ああ、俺なんかも腸が弱いほうだからその確立は高いかも、と私は思った。
そうならないためにはどうしたらいいのだろう。
筋トレして肛門括約筋を鍛える。
そんな筋トレがあればの話だが。
筋肉細胞は高齢になっても増えるらしいから、銭湯でのおもらし防止に是非やらなければ。
銭湯へ行く前に、あらかじめトイレで「大」を出すこと。
暴飲暴食をしないこと。
特に高齢になってからのアルコール飲料の摂取はおもらしに関係がありそうだ。
などと対策を考えてしまった。
それだけ風呂場での光景が鮮烈だったのだ。

それにしてもこの温泉銭湯で目にした光景は、何か象徴的で暗示的であると感じた。
脱衣場で見かけたマッチョな若者が私自身の若い頃の象徴であるとしたら、浴場でのおもらしの爺様もまた、10数年後の私達老人の象徴なのかもしれない。
そういう意味で、私にとって暗示的な光景だったのだ。

人口の老齢化が進んでいる。
このままいけば、銭湯でのおもらし事故は頻繁に起こるかもしれない。
深刻な問題である。
「若者よ身体を鍛えておけ 美しい心が逞しい身体に からくも支えられる時が  いつかは来る。」
という詩があったのは昔の話。
今は「老人よ身体を鍛えておけ」だ。
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