雑談散歩

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遠い世界に

去年の11月9日、「選挙人」による投票で大統領選挙戦に勝利したドナルド・トランプ氏
彼は、このあいだの1月20日に、アメリカ合衆国第45代大統領に就任した。
その報道を見て、私の頭をよぎったのは「遠い世界に」という昔の歌。
「これが日本だ私の国だ」というフレーズ。
懐かしい歌声が私のなかに甦った。

この歌は西岡たかし氏による作詞作曲。
氏も属する「五つの赤い風船」という日本のフォークグループが歌っていたものだ。
1970年代前半に、主に若者たちのあいだで流行った曲である。
1960年代後半から1970年代前半と言えば、日本では「反」のつくデモ行進が盛んに行われていた時期。
  1. ベトナムを含むインドシナ戦争に反対するデモ。
  2. 70年安保条約(日米安全保障条約)を破棄しようと訴える反政府反米運動のデモ。
  3. 成田空港建設反対運動のデモ。
  4. 沖縄の本土復帰運動と反米・反軍事基地運動のデモ。
デモ行進には、学生を中心とした若者たちの姿が多くみられた。
彼らの日本を思う気持ちと、「心の中はいつも悲しい」というセンチメンタリズムが共鳴して、「遠い世界に」は巷間に流れた。

トランプ報道で、トランプ大統領を支持する人たちや、反トランプ政権を訴える人たちのデモ行進を見て、私は40年前の歌を思い出したのだった。
そして、アメリカ国民の心の中で、「これがアメリカだ、私の国だ」という意識が急激に高まっているに違いないと思った。

「私の国だ」というフレーズの意味は「私が所属しているこの国によって、私の生き方は大きく左右される」ということ。
国の在り方に対する個人の危機感が、反トランプデモの規模を大きくしたのだろう。
あるいは、トランプ大統領に対する期待感が、トランプ支持デモに多くの人を駆り立てた。
危機感が大きくなるにつれて「これがアメリカだ、私の国だ」という意識が増大する。
期待感が増す従って「これがアメリカだ、私の国だ」という意識が大きくなる。
現在のアメリカは、現状に対する危機感と期待感で二分されているように見える。

トランプ氏のアメリカ大統領就任式前後に、南米からヨーロッパまで、反トランプ運動が世界中に広がったと伝えられている。
かつてベトナム反戦運動が、アメリカの学生運動から世界に広がったように、この反トランプ運動もトランプ氏の政治活動如何によっては燎原の火となりそうな勢いである。

このままアメリカで反トランプ運動が高まりをみせたら、日本にも反米軍基地運動・反現政権運動となって飛び火するかもしれない。
もしそうなれば、そのときどんなセンチメンタルな歌が流行るのだろうか。
歌は世情を反映して、人々の心の中に入り込む。

しかし、「遠い世界に旅に出ようか」と歌いだしても、安全な旅ができる「遠い世界」は無くなりつつある。
「明日の世界を探しに行こう」と、まだ歌えた40年前だったが・・・・。
この先、探せる明日の世界は、どこにあるのだろう。

ひょっとしたら、世界中の人達が「遠い世界に旅に出ようか」という気分で日本にやってくるのかもしれない。
安全で美しい国というイメージ。
花鳥風月、自然を尊ぶ文化のある国。

「これが日本だ私の国だ」
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