2021/06/26

クロバナエンジュがイタチハギと呼ばれるようになったいきさつを妄想する

林道脇のイタチハギの群生。


東滝沢山(滝沢山地)の平沢林道を散歩中に、イタチハギが群れになって花を咲かせているのを見かけた。
見渡せばあっちもこっちもイタチハギだらけという有様。
集団で黒っぽい穂状花序(総状花序)を空に向けて突き出している。
なにか異様な雰囲気を感じた。

この姿は和風じゃないなと感じたので調べてみたら、イタチハギは帰化植物(外来植物)だった。
国立環境研究所の侵入生物データベースによると、「自然分布」は北アメリカとのこと。
つまり、原産地は北アメリカ。
砂防や護岸、防風や緑化、生垣用低木、飼料として日本に導入されたらしい。
渡来は、1912年(明治45年)ごろ。
本格導入は、1940年代以降とのこと。

以前は、道路の法面(のりめん)補強のために、ずいぶん植えられたようである。
その結果、方々で自生して繁殖しているとのこと。
分布は、日本全国に渡るという。
耐暑性や耐乾性があるとされているので、法面維持には便利な植物として重宝された様子がうかがえる。

イタチハギには、クロバナエンジュという別名もある。
なるほどなるほど、ふんふんふん。

<以下はブログ管理人の妄想であります>


日本に導入された当初は、公にはクロバナエンジュと呼ばれていた。
だが法面の工事現場では、「クロバナエンジュ」という呼び名は長ったらしい。

なので、気の短い職人たちから「おい、クロバナ持ってこいや」と縮めて呼ばれていた。
これ以上縮めようがないほど縮められて、「クロ」なんて呼ばれることもあった。
昭和の初めの頃の話である。

そのうち、「なんかクロの花って、けったいやなあ」という評判があちこちで出るようになった。
法面の補強には役に立つ木なのだが、花の見た目がいまいち美しくない。

想像力に長けたひとりの職人が、「なんやこの花、イタチの尻尾みたいやなあ」と独り言ちる。
それを聞いた耳ざとい職人が、「そうや、これからは、クロをイタチと呼ぼうぜ!」と方々にふれまわる。

「イタチ」という語感は、現場の職人たちのセンスにピッタリフィット。
たちまち全国の職人たちに流行した。
こうしてクロバナエンジュは、すっかりイタチになってしまった。
クロバナエンジュという名前さえも忘れ去られてしまった。

工事の作業指示書や、役所に提出する書類にも、この低木は長い間「イタチ」の名で通っていた。
あるとき、ある頭の固いお役人が、書類の中の「イタチ」にケチをつけた。
「なんぼなんでもイタチじゃ、動物のイタチと混同してしまって、文書の印象が低俗っぽくなりやしないか」

そこで工事の監督や営林署の専門職員も交えて、お役所で会議を開いた。
喧々諤々。
ひとりのお役人が、古い書類を持ち出してきて「この木の本名はクロバナエンジュと言うのだ諸君!」と見栄を切った。

これを聞いた工事の監督が一言申し上げる。
「イタチがすっかり馴染んでしまっているのに、今更クロバナエンジュなんて長ったらしい名前は使えません。職人のリズムがくるってしまいます」
この一言に、またまた喧々諤々。

と、営林署の職員が「イタチの葉っぱは、羽状複葉で萩の葉に似てますな」と専門知識を披露する。
萩は、古来より和歌や俳諧の題材にも取り上げられている格調高い植物である。

工事職人たちがつけた愛称のイタチを残して、その後ろに格式あるハギをくっつければどうだろう。
イタチハギならなんとかお役所の文書の体裁が整う。
職人たちの意を汲むこともできる。
営林署の職員は、自身が発した「名案」に興奮して、涙を流した。

「おう!」とあちこちで上がる歓声、笑顔。
「この木はイタチハギや!」
「イタチハギがよろしゅうおま!」

ということで、満場一致で「イタチハギ」になったとさ。

<妄想から醒める>


イタチハギは、マメ科の落葉低木。
穂状花序の長さは、長いもので30センチに達するものもあった。
私が見かけたイタチハギは、木として直立するよりも、横に広がるような生え方であった。
このイタチハギの群生が目の前にあったら、ヤブ漕ぎして進むことは不可能だろう。
枝や幹に、ハリエンジュみたいな棘はないのだが、それでも手ごわいヤブである。

8月頃に青い果実が出るという。
マメ科の植物らしく、鞘(さや)に包まれた豆果であるとのこと。
この花がどんな豆果になるのやら。
実がついたら、じっくり見物するのが楽しみである。

穂状花序がイタチの尻尾に似ているとか。

イタチハギの葉。

イタチハギの穂状花序

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