雑談散歩

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夏泊(なつどまり)半島とアイヌ語地名

【稲生漁港。】


用事のついでに夏泊(なつどまり)半島に立ち寄った。
夏には海水浴でよく来るが、この時期に訪れるのはめずらしい。
好天気なので、ぶらりと寄ってしまったのだ。
夏泊半島は、青森県のむつ湾にノドチンコのように突き出た半島。
地元の人が夏泊(なつどまり)と言うとき、それは夏泊半島のことを意味する。

青森県の半島

大きな津軽半島と、より大きな下北半島に、挟まれた形の小さな半島が夏泊半島。
青森県で、海に突き出た「半島」が付く地名は、この3つしかない。

西津軽郡中泊町の小泊には、「小泊半島」と呼ばれている半島があるが、国土地理院の地図には、「小泊半島」と記載されていない。
津軽半島から、西側の日本海に突き出たこの突起の、端っこの南側に「小泊岬」という地名がついている。

地元の観光パンフレットや道路標識では「権現崎」という「地名」が使われていることが多いが、国土地理院の地図には「権現崎」の記載は無い。
どうやら、この突起全体を言い表す地名は、不明なようだ。

アイヌ語の地名

面白いことに、小泊も夏泊も「泊」という漢字が使われている。
小泊は、アイヌ語の「ポントマリ」に由来するという。
ポンは、「小さい」という意味。
トマリは、「港、入り江」という意味。

「夏泊」という地名もアイヌ語に因んでいる可能性がある。
1685年作成の「陸奥国津軽郡之絵図(むつのくにつがるぐんのえず)」には、津軽半島の先にアイヌ集落2カ所、夏泊半島の先にアイヌ集落3カ所の記載がある。
さて、「夏泊」はなんというアイヌ語に由来する地名だろうか。
現在の夏泊半島をざっと見ても、アイヌ民族の面影は見当たらない。

鳥取市の夏泊

ところで、「夏泊」という地名は他にもある。
鳥取市青谷に夏泊海岸という場所がある。
ここは、山陰地方で唯一、海女のいる海として知られているらしい。

山桝晴次郎氏の『閃幅伯香に存するアイヌ語の地名』によると、鳥取の「夏泊」という地名の由来は以下の通り。
ナツドマリはノッツトマリからの転訛(てんか)であるという。
ノッツは、アイヌ語で「岬」のこと。
トマリは、ポントマリの例と同様で、アイヌ語で「港」のこと。
よって、ノッツトマリは「岬の港」を意味する地名だという。

青森と鳥取で共通のアイヌ語があったのだろうか?

この解釈が、青森県の夏泊に当てはまるのかどうか。
国土地理院の地形図を見ると、日本海に面した鳥取市青谷町青谷には 「長尾鼻」という小さな岬がある。
長尾鼻の西側に港があって、その地域が夏泊となっている。

青森県平内町の夏泊半島と地形が似てなくもない。
もし日本全国にアイヌ民族が広範囲に存在した時代があったとすれば、どのくらい昔の話だろう?
その当時、遠く離れた青森と鳥取に、同一発音・同一言語の アイヌ語が存在したのかどうか・・・。
もし、存在したとすれば、アイヌ民族は遠隔地との交流が盛んだったことになる。

遠隔地交流の交通手段は舟だったのだろうか。
仮に「ノッツトマリ」を青森の非アイヌ人が「夏泊」と漢字表記したとしても、鳥取では「野津泊」と漢字表記する可能性だってある。
「夏泊」という漢字の一致は何を意味するのだろうか。
などなど、空想はつきない。

アウトドア観光地

夏泊半島突端の山(大島)に登れば、陸奥湾全体を一望できる。
この半島は、青森市に近いので、海水浴場・キャンプ・魚釣りなどのアウトドアライフ観光地となっている。
大島へは橋が架けられていて、満潮のときでも大島へ渡ることができる。
大島の山頂へも山道が続いていたが、時間がなかったので、登らなかった。


大島への渡橋。


大島登山道。
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