2015/05/12

気分が落ち込むと顔がお爺さんになる

夕暮れの飲食店街。

居酒屋で、気分の変動が激しい人を見かけることがある。
特に小さなカウンター居酒屋とかの、不特定の人物が出入りする狭い空間では、そういう人の傾向(性癖?)があらわになりやすいようだ。

ある意味、閉鎖的な空間の中で、周囲の雰囲気(事象?)に影響されやすいのだろう。
居酒屋とかスナックは、そこに滞在している間は、時間限定の擬似閉鎖空間になる。

通常は、飲み終わって店を出るまで、最初座った席に固定される。
隣に、気が合わない常連客が座っても、店を出る以外には、我慢して座っているしかない。

苦手な客が隣に座ったとき、適度に飲んでいれば、席を立って会計をすることはごく自然な行為に見える。
飲み始めてすぐに、嫌いな客が現れた場合は、そうはいかない。
中ジョッキにビールが半分以上残っている状態で席を立って会計をすることは、「俺はおまえが嫌いだ!」と宣言しているようなもの。
そんな子どもっぽいマネはできない。

居酒屋は、喧嘩をする場所にあらず。
楽しい会話でリラックスする和み空間なのだ。

居酒屋の赤提灯。
彼は適度に飲むまで席を立てない。
「針の筵」に縛り付けられる。
嫌いな客の、毎度の自慢話が、否が応でも彼の耳に侵入する。
彼は、我慢の固定を強いられる。

要するに、気分の変動が激しい彼は、人嫌いが激しいのだ。
ひょっとしたら彼は「プチうつ病」かも知れない。
些細なことに対して気分が反応してしまう。
慢性的なものではなくて、そのときの周囲の雰囲気に、気分が一時的に反応してしまうのだ。

彼は、自身が楽しい気分でいるときは、50代半ばぐらいの年恰好に見える。

しかし。
嫌いな客の隣に固定されると、70代の老人のような風貌に変化する。
こんなに変化の差が顕著な人は珍しい。

生き生きと話を弾ませていた彼が、ある客の出現とともに押し黙る。
しばらくして、彼の方に目をやると、彼は様変わり。
しわ深くて憂鬱顔の老人に変身している。

その変化に気がついた周囲の客も、気分が落ち込む。
気分は、知らず知らずのうちに感染する。
老け顔がカウンターにずらり。

不満があるときや我慢をしているときは、口角が下がる。
口角が下がると頬の筋肉や皮膚が引っ張られ、ほうれい線が深くなる。
こうして老人顔がつくられる。

気分が落ち込むと顔がお爺さんになる。
些細なことで感情が揺れ動いてしまう。
ふさぎ込んだと思ったら、ちょっとのことで明るく振舞う。
思春期の頃の、少年の内面を思わせる。

そんな若々しい「気分の揺れ」が、年嵩になると、少年を老人にする。
顔がお爺さんになる。
それを老成とは言わない。
単なる消耗顔。

面白いものだと、笑っては居られない。
カウンターの横の鏡をのぞいたら、私も猿爺さん。

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