おまえは誰?

誰?
居酒屋を出て、細い路地を歩いていたら、背後に人の気配を感じた。

ひょろ長い路地は、古い昔からの通りで、照明に乏しくて暗い。

私は少し酔っていたが、その暗がりの中で後をつけられていることには、なんとなく気がついた。

私がゆっくり歩くと、後の者もゆっくりの歩みになる。

私が立ち止まると、向こうも止まる。

早足に変えると、後から早足の靴音が聞こえる。

近づくでもなく、離れるでもない。

一定の間隔で、私の後をついてくるのだ。

私は酔いが回っているせいか大胆な気分になっていた。

もともとは小心なのだが、ハードボイルドな気分が湧いてきたのだ。

「おまえは誰だ、なんのために俺の後をつけている。」

後を振り返って、叫んだ。

立ち止まった男は暗がりの中でじっとしている。

「おまえは何者だ!」

私は語気を強めた。

「あんたの影さ」

暗がりの中から男の声がした。

「おかしなことを言う。光も無い、こんな暗闇で影なんか出来るわけがないだろう!」

酔っていたので少し饒舌になっている。

「影とは、そういう一面もあるのさ」

相手はあざ笑っているような口調で返してきた。

「屁理屈、こきやがれ!」

私は足下に転がっていた小さな石ころを拾い上げて、暗がりの相手に放り投げた。

「キャッ」という悲鳴と同時に、私の背中に小石のようなものがぶつかった。

振り返って前方を見ると、男の影が私に向かって怒鳴っている。

「おまえは誰だ、なんのために俺の後をつけている。」

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