太陽はカンカン照りだし、孫の姿は見当たらないし
女友達が、彼女の孫の運動会を見物に行ったときのこと。
お天気も良いせいか、運動公園のグランドは黒山の人だかり。
彼女が孫の姿を探していたら、隣に立っていた中年女が話しかけてきた。
「まったく暑いわねぇ。」とその女の、あからさまな不平口調。
「ええ、そうね。」と彼女(私の女友達のことね)は、気の無い返事をしたのだった。
初対面のウンザリ顔の人(その中年女のことね)と、和やかに話ができるほど、彼女は世慣れていない。
「隣の人ったらねぇ、私に水をかけるのよ。」と、その女。
「え・・・?あら、そう?」と彼女は、その女の隣とか周囲とかをチラリと見渡した。
彼女は、孫の姿を探すのに懸命なのだ。
たくさん写真を撮ってくるようにと、ダンナに頼まれてきたから。
そんなら、あんたも一緒に見に行けばいいじゃない、とダンナに言ったら、暑いから面倒だとさ。
まったく、男ってダメね、という彼女の嘆きは毎度のこと。
「隣の人がね、庭の植木にホースでジャバジャバ水をかけるのよ、それがね、庭いじりしている私のところまで飛んでくるの。」と、その女。
「まあ、そうなの・・・。」と彼女の素っ気ない生返事。
「ねえ、ひどいでしょう。嫌な男なのよ。」と、その女。
「・・・・・・・・。」と彼女。
太陽はカンカン照りなのに日傘を忘れるし、孫の姿は見当たらないし、隣の女(その中年女のことね)はうるさく話しかけてくるし・・・・・。
彼女(私の女友達のことね)のイライラは募るばかり。
「ねえ、これってひどいでしょう。ねえ、あなた。」
隣の女は、執拗に何回も同意を求めてくる。
彼女は話題を変えようと、
「あなたのお孫さんは、もう走られたの?」
と、言った。
もう、このやかましい女を振り切らなくてはいけない。
孫は見つからないし、太陽はカンカン照りだし・・・。
「えっ!まあ、あなた失礼ね、私に孫はいないわよ!」と、彼女を憎々しげに見つめる女の視線。
砂漠のような運動公園で、太陽のまぶしさに、彼女は目眩におそわれそうだった。
「あら、お孫さんの運動会見物じゃなかったの?」
平静さをよそおって、彼女は独り言のように静かに言った。
「違うわよ!私は散歩の途中なのよ!まったく、なんて人なの、あなたは!失礼ね!」
と、灼熱の鬼と化したその女は、わめき散らす。
ああ、気分悪いわ。
なんで、こんなに強い口調で攻撃されなければならないの・・・。
親切心で話し相手になってあげたのに。
太陽はカンカン照りだし、孫の姿は見当たらないし・・・・。
彼女の脳裏に、昔読んだ小説の一文が思い浮かんだ。
「きょう、ママンが死んだ。もしかすると、昨日かもしれないが、 私にはわからない。」
あれは、どなたの小説だったか・・・。
太陽がカンカン照りという、小説の印象が色濃く思い出されて・・・・・・・・・・。
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お天気も良いせいか、運動公園のグランドは黒山の人だかり。
彼女が孫の姿を探していたら、隣に立っていた中年女が話しかけてきた。
「まったく暑いわねぇ。」とその女の、あからさまな不平口調。
「ええ、そうね。」と彼女(私の女友達のことね)は、気の無い返事をしたのだった。
初対面のウンザリ顔の人(その中年女のことね)と、和やかに話ができるほど、彼女は世慣れていない。
「隣の人ったらねぇ、私に水をかけるのよ。」と、その女。
「え・・・?あら、そう?」と彼女は、その女の隣とか周囲とかをチラリと見渡した。
彼女は、孫の姿を探すのに懸命なのだ。
たくさん写真を撮ってくるようにと、ダンナに頼まれてきたから。
そんなら、あんたも一緒に見に行けばいいじゃない、とダンナに言ったら、暑いから面倒だとさ。
まったく、男ってダメね、という彼女の嘆きは毎度のこと。
「隣の人がね、庭の植木にホースでジャバジャバ水をかけるのよ、それがね、庭いじりしている私のところまで飛んでくるの。」と、その女。
「まあ、そうなの・・・。」と彼女の素っ気ない生返事。
「ねえ、ひどいでしょう。嫌な男なのよ。」と、その女。
「・・・・・・・・。」と彼女。
太陽はカンカン照りなのに日傘を忘れるし、孫の姿は見当たらないし、隣の女(その中年女のことね)はうるさく話しかけてくるし・・・・・。
彼女(私の女友達のことね)のイライラは募るばかり。
「ねえ、これってひどいでしょう。ねえ、あなた。」
隣の女は、執拗に何回も同意を求めてくる。
彼女は話題を変えようと、
「あなたのお孫さんは、もう走られたの?」
と、言った。
もう、このやかましい女を振り切らなくてはいけない。
孫は見つからないし、太陽はカンカン照りだし・・・。
「えっ!まあ、あなた失礼ね、私に孫はいないわよ!」と、彼女を憎々しげに見つめる女の視線。
砂漠のような運動公園で、太陽のまぶしさに、彼女は目眩におそわれそうだった。
「あら、お孫さんの運動会見物じゃなかったの?」
平静さをよそおって、彼女は独り言のように静かに言った。
「違うわよ!私は散歩の途中なのよ!まったく、なんて人なの、あなたは!失礼ね!」
と、灼熱の鬼と化したその女は、わめき散らす。
ああ、気分悪いわ。
なんで、こんなに強い口調で攻撃されなければならないの・・・。
親切心で話し相手になってあげたのに。
太陽はカンカン照りだし、孫の姿は見当たらないし・・・・。
彼女の脳裏に、昔読んだ小説の一文が思い浮かんだ。
「きょう、ママンが死んだ。もしかすると、昨日かもしれないが、 私にはわからない。」
あれは、どなたの小説だったか・・・。
太陽がカンカン照りという、小説の印象が色濃く思い出されて・・・・・・・・・・。
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