洟をすする女のアデノイド顔貌

鼻の良い犬
わたしは鼻の利く女よ。
風邪をひいたらしく、医院の待合室にいた。
という夢を見た。
高熱のせいか、うとうと眠っていたようだ。
眼が覚めたら、やっぱり、待合室のソファーに座っていた。

すぐ前の方から、「ズズーッ、ズズーッ、」と嫌な騒音が聞こえてくる。
目の前には、女性の頭があった。
長い黒髪。
「ズズーッ、ズズーッ、」という音は、その女性の頭部の前の方で発生しているらしい。
うたた寝から覚めて、意識が戻り始めた頃、その騒音の正体がわかった。
それは、前のソファーに座っている女性が、洟をすすっている音。
耳障りな「洟すすり音」だ。

欧米圏では、「洟すすり」は重大なマナー違反。
日本においても、「洟すすり」の音が不快であることに変わりはない。
医院の受付には、カウンターの上に、箱入りのティッシュペーパーが置かれている。
それで、さっさと洟をかめば良いものを。
前の女性の「洟すすり」は一向に止む気配がない。

私は「慢性副鼻腔炎」という持病があるから解るのだが、「洟すすり」を長く続けていると「耳閉感」という症状が出る。
「耳閉感」は、耳がつまったような不快な 感じで、「慢性副鼻腔炎」がひどかった若い頃によく経験したものだった。
おそらく、この女性も鼻が悪いのだろう。
だったら、なおさら、ちゃんと洟をかむべきである。
まったく迷惑な音だ、などと思っていたら、思いが通じた?のか、その髪の長い女性が斜め後の方へ振り向いた。

やや、なんて、長い顔だ。
髪も長いが、顔も長い。
いや、顔が長いから髪を長くしているのか。
でも、意外と美人。
人の好みは、様々だ。
長い顔好みの男もいるかも知れない、と思っていたら、思い出した。
この面長な顔には、「アデノイド顔貌 」の特徴が多い。
おそらく、鼻が悪くて、子どもの頃から口呼吸を長く続けているうちに、顔つきがそうなったのだろう。
美人系なのに、惜しい。
「アデノイド顔貌」の外観の特徴は以下の通り。
(1) 顔が面長(おもなが)である 。
(2)上あご、下あごの横幅が狭くて、V字型をしている 。
(3)唇が厚い。
(4)鼻が小さく、鼻孔も小さい 。
などなど・・・・。

この他、歯並びが悪いことも上げられているが、そこまでは確認できない。
歯並びは確認できないが、確かに鼻孔は小さい。
まるで、黒点。
こんな黒点の鼻孔では、鼻くそもほじれまい。
などと、熱っぽい頭で思っていると、またまた、思いが通じたのか?その女性は真後ろを振り返った。
女性の長い顔が、顔全体で私を見据えている。
小鼻がヒクヒク動いている。
黒点の鼻孔からは、二筋の鼻汁が、彼女の上唇に届こうとしている。
「あのぅ・・・・、ティッシュ、お持ちでしたら、貸してくださらない。」

彼女の熱っぽく潤んだ眼が懇願している。
垂れ続ける鼻汁は、唇を乗り越えて、彼女の口の中へ侵入しようとしている。
その度に、彼女は洟をすすり上げる。
昇ったり下ったり、まるでエレベーターだ。
私も風邪と慢性副鼻腔炎のせいで鼻水が止まらない。
減りつつあるティッシュペーパーは、守りぬかなければならない大切な私有物。

「ティッシュなら、受付に 置いてありますよ。」
私は、穏やかな口調で返答した。
「ええ、でも・・・・、あそこのボックスの中のティッシュは、全部、わたしが使ってしまったのよ・・・・。」
彼女は、長い顔を横に傾げながら言った。
顔を傾げることで、垂れた鼻汁が、かろうじて口からそれている。
まるで、モジリアニの絵のよう・・・・・・。

そう思ったとき、眼が覚めた。
リアルな夢だった。
ちょっと恐かった。
そのせいか、寝汗をかいてしまった。
この頃寒くなって、厚めの布団をかけてから、初めての寝汗となった。
洟をすする女の夢を見たせいか、鼻が詰まって息苦しい。
たぶん、その息苦しさのせいで、へんな夢を見たのだろう。

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