芭蕉の憧憬「ほととぎす消行方や嶋一つ」

須磨の漁師の、矢先で鳴いていたホトトギスが飛び立った。
芭蕉が、それを目で追う。

ホトトギスは海の方へと飛んでいく。
芭蕉は「それ見たことか」と肩を落とす。
漁師の矢先なんかで鳴くから脅されるのだ。
ホトトギスよ、来た道を引き返すために海の方へ行くのか。

ほととぎす消行方(きえゆくかた)や嶋(しま)一つ
松尾芭蕉

海の上を飛んでいたホトトギスがだんだんと小さく見えて、消えそうになった。
そのホトトギスの消えていく彼方に島影が見える。
この島が淡路島だとすると、須磨と淡路島の距離は4キロメートルぐらい。
目と鼻の先と言って良いほどの、そんなに遠い距離ではない。

「あはぢ嶋せとのしほひのゆふぐれに須磨よりかよふ千鳥なくなり(西行)」

芭蕉の思いのなかを、西行の歌がよぎった。
須磨から淡路島に通う千鳥がいる。
そうか、あのホトトギスも淡路島へ向かっているのだ。

淡路島には弓矢で鳥を脅す漁師もいないことだろう。
点のようになったホトトギスは、もう芭蕉の目には見えない。

と、ホトトギスが消えたところで、ブログ管理人の根拠のない空想が始まる。

その飛び去ったホトトギスは、芭蕉の憧憬だったのかもしれない。

「千鳥なく絵嶋の浦にすむ月を波にうつして見る今宵かな(西行)」

淡路島には、西行が月見の歌の題材にした絵島という景勝地がある。
芭蕉はそこで、西行が歌に詠んだような月見をしてみたかった。
須磨の月見に、勝るかもしれない絵島の月見を楽しみたかった。

だが、淡路島までは足を延ばせない。
そろそろ、「笈の小文」の旅も潮時。

ならばホトトギスに、その夢を託そう、と芭蕉は句に詠んだ。
ホトトギスも、渡りを行う旅人じゃないか。

同じ旅人ならば・・・・と、芭蕉は、ホトトギスに思いを込めた。
ホトトギスよ、お前も千鳥のように、淡路島へ渡り、絵島で月を見ながら鳴いておくれ。

ほととぎす消行方や嶋一つ

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