雑談散歩

    山スキーやハイキング、読書や江戸俳諧、山野草や散歩、その他雑多なことなど。

「すみだ北斎美術館」「芭蕉記念館」「深川江戸資料館」を巡って江戸散歩を楽しんだ

両国の東京東信用金庫の建物の外壁面に設けられたベンチに鎮座している葛飾北斎のブロンズ像。北斎さんの両側にすわって記念撮影ができるようになっている。


所用があって久しぶりに東京へ出かけた。
日帰りも可能な用件だったが、せっかくなので人形町のビジネスホテルに一泊し、翌日は江戸文化に触れる散歩を楽しむことにした。

ルートは、両国駅→国技館→すみだ北斎美術館→芭蕉記念館→芭蕉稲荷神社(芭蕉庵跡)→深川江戸資料館→東京駅。

両国から国技館の前を通って「すみだ北斎美術館」へ。
次は「芭蕉記念館」と「芭蕉稲荷神社(芭蕉庵跡)」を見物。
最後は、「深川江戸資料館」でのんびり。
その後、東京駅八重洲口までと、全行程を徒歩で通した。

行程は、およそ8キロメートル。
江戸風に言うと二里一町のお散歩。
スマホのグーグルマップを頼りに歩いたが、江戸古地図を見ながら歩いたら、もっと楽しかったに違いない。

すみだ北斎美術館

「すみだ北斎美術館」は、北斎漫画の立ち読みが楽しかった。

書物が高価だった江戸時代の庶民は、貸本屋で本を借りて愛読していたらしい。
北斎が描いた北斎漫画、黄表紙や読本の挿絵などを嬉々として楽しんだことだろう。

文字を読めない人でも、絵を見るだけで楽しめた。
北斎は、そういう文化を作った人だった。
江戸人の楽しそうな笑顔が目に浮かぶようである。

この美術館に展示されているアトリエ兼居室を再現した模型「北斎アトリエ」は、「画狂老人」の息遣いが聞こえてくるような迫力があった。
こんな暮らしぶりを楽しんでいるのか、困惑しているのか。
同居している三女のお栄さんの表情が、何とも複雑。

それに比べて、北斎爺さんの楽しそうな表情が面白い。
自らを「画狂老人」と称していたらしいので、自身の変わり者ぶりを、それなりに自覚していたのだろう。

国技館の前を素通り。

すみだ北斎美術館のメタリックな外観。

アトリエ兼居室で過ごす画狂老人・北斎と三女のお栄の模型。


芭蕉記念館

「芭蕉記念館」の芭蕉を囲む蕉風俳人のパネルの中に向井去来(むかいきょらい)の名はあったが、同じく京都で暮らしていた野沢凡兆(のざわぼんちょう)の名が無いのは寂しい。
凡兆は、妻で俳人である羽紅とともに、在京中の芭蕉を歓待していたとされているのに。

「芭蕉庵跡」は、小名木川が墨田川へ流入する角にあった。
ここが「深川三股のほとり」であったのだ。

史跡になっている土地は狭いものだったが、当時は目の前に川岸が広がっていたに違いない。
「櫓声波を打って腸氷る夜や涙」なんて句を、寒さにふるえながら作った場所である。
この草庵で、芭蕉は自らを「乞食の翁(こつじきのおきな)」と称した。

隅田川。芭蕉も墨田川の川岸を散歩したことだろうが、2000年に入ってからの東京都のウォーターフロント開発で往時を偲ぶ景色は消えている。


隅田川方面からの芭蕉記念館の簡素な入口。


芭蕉記念館の庭で、甘い香りを放っていた卯の花(ウツギ)。


芭蕉が愛玩したと伝わっている石の蛙。この蛙が発掘された場所が芭蕉庵跡地とされている。


芭蕉史跡展望庭園。深川芭蕉庵の提供者であると言われている杉田杉風(すぎたさんぷう)が描いた絵を元に製作した芭蕉の銅像がある。


芭蕉稲荷神社。ここから石彫りの蛙が発掘されたことから、この場所に深川芭蕉庵が建っていたとされている。


芭蕉庵跡の石碑。

深川江戸資料館

「深川江戸資料館」では、映画のセットのような江戸深川の家並みを見ることが出来た。
そんな空間で、江戸時代の空想を楽しんだ。

青森から東京まで新幹線で3時間と5分。
青森と東京が近くなった分、現代人は江戸から遠く離れてしまったのだろう。

スマホ片手に江戸の文化に触れても、実感が湧かない。
現代の作り物であっても、あの長屋の狭い部屋に泊まれたならば、江戸人になった夢を見れたかもしれない。

深川江戸資料館。


船宿の台所。


出口の階段から火の見櫓と掘割(水路)を見下ろす。

江戸の庶民の暮らしは狭かった

北斎の居室兼アトリエは狭かった。
芭蕉庵も狭かった。
深川の町人長屋の住まいも狭かった。

江戸の都市の面積の5割から6割は武家屋敷で占められていたと言われている。
そうすると、江戸の庶民は狭い住まいで暮らしながら、大都市江戸の庶民文化を支えていたことになる。

北斎漫画や浮世絵を手に取って眺め、芭蕉の発句を口ずさみ、粋な暮らしを楽しんでいたに違いない。

居室が狭かったとしても、住人が不便に感じなかったなら、そこは幸の多い空間だったと思いたい。

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