2020/12/27

クマを間近で目撃した下折紙沢林道のスキーハイキング

下折紙沢スキーハイキング行程略図。


下折紙沢でクマを目撃

下折紙沢の林道から尾根に上がって、展望の良い場所で、雪をかぶった葉抜橋山高地場山を眺めてコーヒーを飲もうと、スキーハイキングに出かけた。

そうしたら、この時期に思いもかけないクマを目撃。
帰り道では、そのクマが深雪を延々とラッセルした深いトレースの横を通って帰ってきた。

クマの足跡は、春スキーの八甲田山や滝沢山地で何度か見かけたことがあったが、クマが深雪に潜り込むようにラッセルした跡を見るのは初めてである。
もちろん滝沢山地でクマを見たのも初めて。

クマがついさっき通ったばかりと思われるラッセル跡を見て、単独山行の心細さを痛感した次第であった。

太った若いクマ

下折紙沢に降りる側道が雪でふさがっていたので、500mぐらい先の駐車帯にクルマを止めた。
駐車帯から青森の市街地へもどる形で、スキーで道路わきの林の中を進み、みちのく有料道路の高架下に12分ぐらいかかって到着。

野内川に架かっている橋の上でストックを差して雪の深さを測ったら70センチほどだった。
スキーがちょっと幅広なので、スキーを装着した雪の深さはくるぶしの上ぐらい。
空を見上げれば、お天気は上々。
今シーズン初めてのスキーなので、ゆっくりと歩いた。

大畑沢を過ぎて20分ぐらい歩くと右手にコンクリートの堰堤が見える。
堰堤があるあたりから谷が狭まっている。
下折紙沢が、林道のすぐそばを流れ、対岸の尾根の急斜面も林道に迫ってくる。

堰堤を過ぎたら、右手の斜面からザザッという音がした。
音がした方を見ると、木がまばらに生えている急斜面を太った大型動物が、腹滑りしながら沢の方へ降りている。

クマだ!と思って、ウェストポーチからカメラを取り出そうとしたが間に合わない。
体長1メートルちょっとの、まだ小柄な若いクマのようだった。

クマが沢を渡って林道へ出てきたら大変だと、しばらく立ち止まったが、その気配はなかった。
林道から山へ登る予定の場所が近かったので、そのまま進んで林道を離れ、登高を開始した。
コンパスを合わせた斜登高ルートは、木々の間隔が狭くてあまり快適ではなかった。

ショートカットルートを斜登高して山の林道へ

木の混んだところを避けながら斜登高して40分ぐらいで山の林道にぶつかった。
V字状の小沢とか急斜面とかの難所を避けながら右往左往したが、ショートカットルートの方角はバッチリ合っていた。

林道の手前あたりから道しるべの赤テープが目についた。
雪山の登山者の目印にしては、枝に結ぶ位置が低すぎる。
夏山で、コンパスを合わせて藪漕ぎし、このルートから林道を利用して折紙山を目指したのかもしれない。
物好きなご同輩もいるのだねえ、などと感心している頃は、もうクマのことをすっかり忘れていた。

林道の緩い傾斜を正午まで登って、キリをつけた。
ちょっと先の広場まで行ってみたかったが、今シーズン初のラッセルで体力切れ・時間切れである。
帰りは林道を滑り降りた。
雪は重かったが、適度な斜度が続いていて快適だった。

クマのラッセル跡

山の林道を滑り下りて、沢沿いの林道を見下ろしたとき、幅のある深いラッセル跡が見えた。
スキーの跡ではない。
スノーシューの集団の跡のように見えた。
物好きな人たちもいるもんだねえと自分のことは棚に上げてそう思ったりしたが、近づいてトレースを見てびっくり。
動物が深雪ラッセルした跡だった。

幅50センチぐらい。
深さ40センチぐらい。
腹をこすりながらのラッセル跡が、下折紙沢の上流方向に向かって続いている。
ラッセルの底には、動物の足跡がまだ新しい。

林道から山へ入る前に目撃したあの若いクマのものに違いない。
小柄な体格なので、親離れしたばっかりの個体と思われる。
単独での越冬は、この冬初めてではあるまいか。
そのため(無経験故)に冬ごもり(冬眠)のタイミングを逃してしまったのだろう。
食いしん坊の若いクマは、ギリギリまで木の実を食べあさり、今日やっと冬眠を決意して、巣穴をめざして猛ラッセルを敢行したと思われる。
実に健気。
私にとっては恐怖。

冬眠しないクマの報告

近年の暖冬のせいか、日本各地で冬眠しないクマの存在が報告されている。
環境省のサイトの「野生鳥獣の保護及び管理」>「クマに関する各種情報・取組」のページに「クマ出没情報(速報値)」というデータがある。
それによると、青森県の冬期の出没件数は、2018年12月は2件、2019年1月は7件、同年2月は1件、同年3月は2件であるという。
ただこれは、人間がクマを目撃したという「報告」を元にした情報であるから、現実にはもっと多くの個体が冬眠してないか、冬眠を中断して出没しているかもしれない。

私の想像では、積雪が1メートル以上の山では、移動が困難であるし餌となる木の実も探せないのでクマは冬眠する。
積雪が30センチ~50センチと少ない山では、冬眠しないクマもいるかもしれない。
今日見たクマは、丸々と太っていたので、冬眠の準備完了の「冬眠クマ」であると思われる。
おそらく、今日の夕方眠りについて、春の雪どけの朝まで目を覚まさないことだろう。
そう願った。

冬眠するクマが摂取する食物資源

ところで、このあいだ(12月12日)に地獄沢の広場で大量のヤマブドウの落下房を見つけたとき、なぜクマはこんなにおいしいものを食べないのだろうと書いた。
太ったクマを目撃して、その答えが今わかった。
クマにとってこの時期食べなければならないのは、ヤマブドウではなくドングリやブナの実なのだろう。
冬眠するためにクマは効率よく食物資源を得なければならない。
短時間で大量のエネルギー源(炭水化物・脂肪・タンパク質)を確保するために木の実の採食に専念しなければならないのだ。
フルーツを食べている暇もお腹の余裕もないのだろう。

無事帰還

さて、沢沿いの林道を下流に向かって歩いた。
帰りは緩い下り勾配だが雪が重くてスキーが滑らない。
下りのラッセルをしながら、クマの上りのラッセル跡と並行して歩いた。
若いクマの上りと老スキーヤーの下りってなんか象徴的。
なんて思いながら、恐る恐る黙々と歩みを進めた。

クマが沢から林道に上がった地点は、私が山に入った地点から50メートルぐらい上流だった。
タイミング的には、登高を開始したころ、クマも沢沿いの林道でラッセルを開始したのだろう。

クマのラッセル跡から解放されてちょっと歩いたら、私のスキーのトレースにたどり着いた。
そこから滑ったり歩いたりで駐車帯のクルマに着いたのは午後2時半だった。
無事帰還。
登り3時間、下り2時間30分。
クマに出会って緊張したが、新しいルートの偵察山行は楽しかった。


車道の横をシール装着のスキーで歩く。

みちのく有料道路の高架下。

野内川の渓流。写真の奥に、左手から下折紙沢が合流しているのが見える。

下折紙沢沿いの林道を進む。

堰堤。この堰堤を過ぎたあたりで、右手の山の急斜面を下りてくる太ったクマを目撃。

沢沿いの林道から山へ入る。

山の林道に到着。赤色の目印テープを発見。

もう廃道になっている山の林道。

奥に見えるのは、下折紙沢対岸の尾根。

登ってきた山の林道を振り返る。

山の林道に陽が射しこんでいい感じ。あたりはカラマツの森。

本日の到達地点。登ってきた方を振り返って撮影。

帰路、下折紙沢に近づいた山の林道の下の方で対岸の山を眺める。

なんと!おそらく往路で目撃したクマがラッセルしたトレース。下折紙沢の上流方向に向かって進んでいるらしい。

トレースの底にクマの足跡

クマが下折紙沢の方から林道に上がった地点。左手が沢。帰路方向に向かって撮影。

私が沢沿いの林道から山に入った地点。

スポンサーリンク