2013/09/20

スナックの名物ママ

スナックのママさん
スナックママ。
幻想の名物ママ
どこかにいそうで、なかなかいないのが、スナックの名物ママ。
酔客達は、幻想の「名物ママ」を求めて夜の町を彷徨う。
軒下の看板の灯りを探す。
店内から漏れてくる話し声に耳をそばだてる。

素人仕事
が、どこの店でも、カウンターの中にいるのは、「普通のおばさん」か「普通のおねえさん」。
そうなのだ。
飲食業の色々な業態のなかで、スナックは素人が一番参入しやすい「商売」かもしれないからね。
(1)接客はカラオケまかせ。
(2)おつまみは、「乾き物」つまり既製品まかせ。
接客業のプロとしての、話術も手料理術もいらない。
めんこい顔と、良いスタイルがあれば、お客は集まる。

ところが、そんな「普通のママさん」でも、一箇所で30年も営業し続ければ「スナックの名物ママ」じみてくることがある。
長い年月の「仕事」が、それなりに存在感のある「名物ママ」を育てるのだろう。
まあ、人によりけりだけどね。

仕事が人を育てる
「あそこのママは話題が豊富で、面白いよ。」とか。
「人を見る目があって、なかなかのママだよ。」とか。
はては、「人智に長けた、ネオン街の女ソクラテスだよ。」みたいに大仰な評判が立ってくる。
30年間、ひとつの仕事で生計をたててきたということは、そういうことなのだろう。

30年前、話術も手料理術も持ち合わせないまま、スナックを開業。
彼女は「お店の楽しい雰囲気作り=商売繁盛」という「運営方針」を一途に守り努力してきた。
瞬く間に年月は過ぎ去り、30年経った。

情報の資産的な価値
「それがママさんの資産だね。」と酔客。
「資産なんてとんでもないわ。いまだにアパート暮らしだし、銀行預金だって微々たるものよ。」とママ。
「いや、30年間お店を続けてきた実績が資産なんじゃないの。」
「そうかしら、実績ってね、自慢にはなるかもしれないけど、お金にはならないわ。お金にならないものなんて資産じゃないわよ。」

「だけど、30年間培ってきた“ノウハウ”は、資産的な価値であるし、お金にもなると思うけどなぁ。」
「“脳が這う”って何の事よ。まるでゾンビみたいじゃない。」とママ。
「“ノウハウ”ってのは知的財産みたいなものさ。」と酔客。
「チテキザイサンって、血が財産だって事なの?ますますゾンビ的ね。」
「いや、血よりも情報だね、情報が財産さ。」
「ジョウホウって、スパイ映画の見過ぎじゃない。」

「この店に飲みに来たいろいろなお客さんが情報ってことさ。」と酔客。
「言ってみれば、お客さんって情報の宝庫だね。」と酔客。
「ママさんはお店をやりながら、そのいろんな情報を収集し整理して、お店の運営に役立ててきたのさ。」と酔客。
「例えば、お客さんの好みとか癖とか性格とか趣味とかね。」と酔客。
「そういう情報って、そのお客さんへの対応の仕方のヒントになると思うんだけど。」と酔客。
「そのお客さんの情報が豊富なら、彼に対する接客方法も豊富にあることになる。」と酔客。

「つまり、お客さんに飽きられないってことさ。」と酔客。
「その情報を、個性あふれるママさん独自の企画力でもって編集して、お店を運営してきたんじゃないの?」と酔客。
「チンプンカンプンよ。」とママ。
「ママさん自身が編集して溜め込んだ情報を、“スナック営業の方法”として文章化し、テキストにすれば売れると思うよ。」と酔客。
「本が売れれば、ママさんにお金が入るから、ママさんの実績はお金を産む“資産”てな訳よ。」と酔客。

ほんとうは、どこにもいない名物ママ
「そんなにうまくいくわけないわ。」とママ。
「30年間、うまい話に乗ってこなかったから、こうしてお店を続けているのよ。」とママ。
「おっと、それも大切な“ノウハウ”だね。」と酔客。
「それに、30年選手のスナックママなんていっぱいいるわよ。」とママ。
「でも、30年選手の“スナックの名物ママ”ってのは、そうはいないよ。」
「厳しい環境のなかで生き残ってきた希少な存在の知恵には、お金を払ってでも学ぶ価値ってのがあるのさ」と酔客。

「それが、“名物ママ”を売り出しているのだからね」と酔客。
「私を、“浅草名物雷おこし”みたいに言わないで。」
「そうそう、ママさんのそういうトークも面白いんだよねぇ。」と話好きな酔客。
それは、置いといて。

どこかにいそうで、本当はどこにもいないのが、スナックの名物ママ。

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