2018/09/29

無雪期の高地場山登頂と、山腹のすばらしいヒバ林

【使用した地形図。】


有雪期や無雪期に、「滝沢山地」にある名前のない山、道のない山にちょくちょく登っている。
今日は、「滝沢山地」では貴重な名前のある山に登った。
去年の春の残雪期にスキーで登った高地場山(たかじばやま:標高459m)である。

高地場山は、名前はあるが道(登山道)のない山。
無雪期に「滝沢山地」の、名前があって道のない山に登るのは、葉抜橋山(はぬきばしやま:標高615m)以来2度めである。

「滝沢山地」で、名前がなくて道のない山で好きな山は、なんと言っても大毛無山南尾根に鎮座する734峰
赤沢から平沢への峰越ハイキングは、今でも忘れられない「滝沢山地」のパノラマコースであった。

それは、さておき。
「滝沢山地」はほとんどが国有林で、自然公園ではないので遊歩道は備わっていない。
道と呼べるものは、営林署が管理している林道ぐらいである。
その林道も、現役の伐採道だったり伐採道が廃道になったりで、遊歩道には向かないものばかり。

東北森林管理局では、『「レクリエーションの森」「スキー場」「野営場」「登山道」「その他遊歩道」「休憩小屋等の施設が設置されている箇所」に入林する場合は、事前の入林届の提出は不要です。』とサイトに注意事項としてアップしている。

私の入山は、「入林届の提出は不要です。」という枠からはちょっと外れていると思う。
だが風変わりな森林愛好者として、かんべんしてやってください。

さて、平沢林道沿いの平沢には、一ヶ所だけコンクリート製の立派な橋がかかっている。
大型のダンプカーでも渡れそうな橋だが、橋の両端に自動車道路はない。
特に橋の山側は、下の写真のように、深いヤブになっている。

橋を渡って、すぐ右手のヤブの中へ入り、少し進んでから左手に曲がる。


【山の中に立派なコンクリート橋。】


すると、下の写真のような踏跡がついている。
かつての林道跡のようなところに、かすかについている踏跡をたどって、ゆるい傾斜を登る。


【踏跡。】


踏跡は、ミズが群生している原っぱを横切って上へとのびている。
ここのミズは、茎が細め。
探すと、手頃に太いものもあるので、帰りにいただくことにしよう。


【ミズ(ウワバミソウ)の群生地。】


林道跡(伐採道の廃道)は、ゆるい傾斜地を登ったり下ったりして続いている。
草薮に覆われているので、ちょっと分かりにくい。
去年の春の残雪時には、明確だったのだが、すっかり草薮に隠れている箇所もある。
残雪時の記憶をたよりに進む。


【伐採道の廃道を進む。】


【カール状の谷。】


しばらく歩くと、尾根に囲まれた小さなカール状の谷にたどり着く。
見覚えのある谷である。
キノコのありそうな場所だなあと、スキーで通りながら思ったのだったが、この時期に実際こうして来てみたら、太い風倒木が見当たらない。
キノコの姿もない。

谷から、傾斜のゆるい場所を選んで尾根に上がる。
この尾根が高地場山に続いている尾根である。
地形図をにらみながら、尾根のトップを歩けば、迷うことなく高地場山へ着くはずである。


【谷から上がって、尾根に出る。】


【尾根の林床にミヤマシキミ。】


上の写真は、尾根の林床で見かけたミヤマシキミ。
ごらんの通りの低木。
最初ヒメアオキかなと思ったが、ヒメアオキと違って葉が全縁で厚みがある。
ミヤマシキミは有毒で、特に果実の毒性が強いと言われている。

クマもカモシカもこの実を食べないので、ミヤマシキミの実は、雪に埋もれるまで鮮やかな赤い色を放っている。
光沢のある深緑の葉に、丸くて赤い実の組み合わせが美しい。


【火焔ブナ。】


上の写真の、特徴的なブナの木は、高地場山の山頂尾根の南端に立っている。
縄文土器の火焔型土器に雰囲気が似ているので「火焔ブナ」と名付けた。
この「火焔ブナ」まで、尾根ルートはやや急登を強いられる。
しばらく山登りから遠ざかっていたので、ちょっとしんどかった。


【高地場山の山頂広場。】


「火焔ブナ」から真北に、ほとんど平らな尾根を進むと小高い丘のような山頂が姿を現す。
山頂広場に到着である。
平沢のコンクリート橋から1時間10分ほどかかった。

山頂広場は、ヤブが空いていて開けた感じである。
ただ樹木にさえぎられて、山頂からの見晴らしはきかない。
周囲を歩いて三角点を探したが、見当たらなかった。

見晴らしはきかなくても気分のいい広場である。
山頂広場で小休止してから先へ進む。
右手樹間から647峰が見えた。
その奥に、去年の春の初めにスキーで登った681.3峰が鎮座している
このふたつの山に名前がないのは寂しいことだ。
青森市の滝沢の集落から大きく見える山なのに。

山頂広場から5分ほど尾根を進んだら、ヤブが深くなった。
2メートルぐらいあるネマガリダケのヤブである。

ここまでのルートは膝下前後(45cm~60cm)程度の快適なヤブだったのに。
ネマガリダケのヤブコギを100mぐらい続けたが、先が見えないので断念した。

山頂に向けての登り坂のヤブコギなら挑戦したが、平らな尾根のヤブコギは苦手である。
方角を見失う可能性が大きい。
地形図を見ると、681.3峰へ近づくに従って、平坦な尾根が太くなっている。
迷いやすい地形である。

681.3峰へ近づきたかったが、ここから先は雪山コース。
そう思って引き返すことにした。


【山頂付近の樹間から秀麗な647峰を眺める。】

【三連ヒバ。】


山頂からの帰り道に、尾根の東側の中腹で素晴らしいヒバ林を見つけた。
上の写真は、三本のヒバが根本付近で融合しているもの。
三本の融合木を見るのは初めてである。
「火焔ブナ」に引き続き、「三連ヒバ」と名付けた。

その下のゆるい傾斜地に、ヒバ林が広がっている。
強い風が吹かない山域なのか、ヒバはまっすぐ上に向かってのびている。
まるで人工の育成林みたいなヒバの姿。

こんなすばらしいヒバ林に出会えるなんて、高地場山も捨てたものではない。
遠くから見ても目立たない山なのに、なぜこの山に名前がついているのだろうと思っていたのだ。

案外、この山の名前の由来は、このすばらしいヒバ林にあるのかもしれない。
「タカヒバヤマ」が訛って「タカジバヤマ」になったとか。
「タカヒバ」は「高貴なヒバ」の意だったり。
などとヒバの木に囲まれて空想を楽しんだ。

先日散策した下折紙沢のヒバ林と比べると、ここのヒバの方が端正である。
馬に例えるなら、サラブレッドのようにスマート。
いっぽう下折紙沢のヒバは、農耕馬のようにガッシリと太い。

きっと育っている環境のせいなのだろう。
山の形が様々であるのと同様に、森の形も様々であるのだ。

私は農耕馬的なヒバが好きだが、こうして端正な森のなかにいると、こんな森にも惹かれてしまう。

心動かされる気持ちのいい場所なので、ここで大休止。
去りがたいヒバの森だった。


【広いヒバ林。】


【清々しいヒバ林。】


【クサギの結実。】


上の写真は、帰り道に見かけたクサギの木。
花が咲いているように見えるが、赤い花びらのように見えるのは萼。
萼の真ん中にクサギの黒い実が見える。


【ミズをいただく。】


帰りにミズを少々いただいた。
家で油炒めにして食べたら、柔らかくて粘りがあって美味しかった。

下の写真は、夕方の愛犬の散歩で青い森セントラルパークに行ったときに撮ったもの。
昼に赤いヒバ林を眺め、夕暮れに赤い夕焼けを眺め。
赤赤で血のめぐりが良くなりそう。
山歩きの心地よい疲れが、全身を巡っている。


【おまけ。青い森セントラルパークで見た夕焼け。】

2018/09/26

選挙候補者掲示板の支柱が単管(鉄パイプ)で組まれていた

【単管で組まれた掲示板の支柱。】


青森市議会議員一般選挙の投票日は10月28日(日曜日)。
10月21日が告示日となっている。

告示日には、候補者のポスターが掲示板に貼られる。
その掲示板を取り付ける支柱が、公園に組まれていた。
いつもは木製角材で組んでいたような気がするが、今回は単管で組んである。

台風の時期なので、頑丈な部材を使っているのだろう。
単管とは、おもに建築工事現場の足場補強材として使われている鉄パイプのこと。
単管パイプの略称である。

単管を組み立てるための金具に、クランプとジョイントがある。
クランプには、直交クランプと自在クランプがある。

直交クランプは、単管同士を直角に交差させて固定する締め金具。
自在クランプは、単管同士を自在な角度に交差させて固定する締め金具。
付属のボルトのナットを締めて、強く固定できる仕組みになっている。

ジョイントは単管同士をつなぐ金具のこと。
直線方向につないだり、コーナーをつくってつないだり、T字状につないだり、いろいろな機能を備えたジョイントがある。

写真の掲示板の支柱は、直交クランプと自在クランプだけで組み立てているように見える。
単管についての多少の取扱知識があっても、素人ではこんなにきれいには組めない。

建築工事現場の足場を組むのは、鳶(とび)職人の仕事である。
単管を整然と組む技術を持った職人でなければ、安全な足場は組めない。
この単管の掲示板支柱も整然と組まれているので、専門の鳶職人の仕事に違いない。
単管は、こんな使い方もできる便利な部材である。

「青森ねぶた祭」の観覧席(桟敷席)もこの単管で組まれている。
もちろん組んでいるのは、専門の鳶職人である。
このほか、フェンスとか仮設小屋とかパーゴラとかビニールハウスの設営などに単管が応用されている。
また、悪しき使用例として、「鉄パイプ」という呼び名で、1970年代に「過激派」の凶器として使われたこともある。

単管は、ホームセンターなどで売られていて、一般の人でも入手することができる。
心得とラチェットレンチなどの道具があれば、単管での簡単な工作物なら一般の人でも製作可能である。
青森では、単管を用いた雪よけの柵や、簡易カーポートなどをときおり見ることがある。

工作資材としての単管のよいところは、安価で丈夫で取扱が比較的簡単であること。
溶融亜鉛メッキ(ドブメッキ)で仕上げられているために錆びにくい。
また、単管は丸パイプなので、いろんな角度からの引張・圧縮に対して一定の強度が保てる。
などなど。

こんな特長を持っている単管なので、仮設の看板の支柱には最適である。


【ガッチリ組まれている。】


【クランプで組み立て。】


【整然と組まれた単管。】


【単管に垂木がしばりつけられている。】


10月3日には、公園に設営された単管に選挙候補者掲示板が取り付けられた。
水平部材の単管に、「なまし番線(12番線)」で垂木を緊結し、垂木に厚ベニヤの掲示板を木ネジで固定してある。
これで強風が吹いても大丈夫。

掲示板には、57枚の候補者ポスターを貼ることができるように、線引きされている。
青森市議会議員一般選挙。
はたして何人の市議会議員志望者が、立候補することやら。

当選されたあかつきには、この単管支柱工事のような、スッキリしたいい仕事をしていただきたいものです。


【裏面。】


【表面。整然とした仮設掲示板の外観になっている。】

2018/09/23

下折紙沢の渓流で、愛犬の水泳とミズ採りとヒバ林の散策

【さわやかな下折紙沢の渓流。右側がやや深い淵になっていて、愛犬の遊泳場となっている。】


下折紙沢渓流での愛犬の水泳散歩は、今日で今年3回目である。
今日のお天気は、晴れ時々曇りで、まあまあの散歩日和。

下折紙沢は昨日の雨でいつもよりほんのちょっと増水している。
それが、水泳好きな愛犬にはうれしい水量となった。

この沢は、少々の増水では濁らない。
上流の森の伐採は進んでいるが、山腹のブナ林はまだ健在であるようだ。
ブナ林がもたらす清流で、愛犬は毎回水遊びを満喫している。

こんないい場所なのに、この渓流で遊んでいる人をほとんど見かけない。
なので愛犬は自由に振る舞える。
ここは愛犬の水泳天国。
得意満面で泳ぎ回る。
水が澄んでいるので、手足の動作が丸見えで、なんとも愛らしい。


【スイスイスイミング。】


ここは青森市の「滝沢山地」のなかで、割と市街地寄りなところだが、あまりアウトドアの御仁を見かけない。
近場で便利なアウトドアスポットは、ゴミのポイ捨てで汚れがちである。
人が寄り付かないことは、環境保全にいいことかもしれない。
などと、聖人のようなことを言っているが、私もミズを採ったりヤブコギをしたり。
環境破壊者の一員であることに変わりはない。

沢沿いの林道を、ごくたまに山菜採りのクルマが行き過ぎる程度で、ヒバ林に囲まれた静かな渓流である。
でも特別な場所ではない。
青森県内には、こんな場所はザラにある。

この渓流の特徴を強いてあげれば、水がきれいで、山菜のミズ(ウワバミソウ)が豊富で、美しいヒバの林を見物できる程度である。
一般的にはそんなものだが、私には愛犬と楽しく遊べるかけがいのない場所。
おまけに好物であるミズを収穫できる。
秋が深まってくるとキノコもちらほら顔を出す。


【澄んでいる沢の水。】


【11歳の大型犬が、のんびり水泳散歩。】


【前足を目一杯前に出して水をかくのが愛犬の泳法。】


【ミズ(ウワバミソウ)の群生。】


ヒバ林では、ヒバの木が放つ独特の芳香であるヒノキチオールでリフレッシュできる。
ヒノキチオールの成分であるα-ピネンによって、ストレスが和らぎ心が落ち着くと言われている。
青森ヒバにはヒノキの10倍ものヒノキチオールが含まれているという。

周知のことだが、青森のヒバ林は日本三大美林の一つ。
ということは、ヒバ林を散策している私は、とても貴重な日本三大美林のなかを歩いているということになる。

これはちょっと特別っぽい。
青森県的にはザラだが、日本的にはかなり特別な場所なんじゃないの。
と思えてくる。

愛犬に癒やされ、さわやかな渓流に癒やされ、青森ヒバのヒノキチオールに癒やされ。
おまけに胃腸の働きを活発にすると言われているミズを収穫できる。

こんな場所が随所にある「滝沢山地」だから、私は春夏秋冬を通して、ここで遊ぶことが多い。


【少々収穫。】


【赤い樹皮をもっている青森ヒバ。ヒノキチオールの宝庫。】


【ヒバ林を散策。林床はほとんどシダ類、それにヒバ稚樹。ヒバ林の外れの方にミズ(ウワバミソウ)、背の低いチシマザサなど。】


【ヒバ林に囲まれた下折紙沢の渓流。】


【石ころの川原。】

2018/09/20

市街地の側溝でオオアカバナの花が咲いていた

【側溝でオオアカバナが咲いていた。】


愛犬の散歩の途中、またしても側溝で咲いているアカバナを見つけた。
今年の秋はアカバナに縁があるみたいだ。
このあいだ見つけた事務所の通路のアカバナは、誰かに踏まれておシャカになってしまったが、またこうしてアカバナに出会うことができた。

そこは、ツリガネニンジンを見つけた松原公園の近くにある側溝だった。
花は、側溝の中から草丈を伸ばして、咲き誇っている。
アカバナにしては、花弁がちょっと大きいようだ。
そう思って近づいてみると、なんとこの花はオオアカバナだった。

環境省レッドデータ絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定されているあのオオアカバナではないか。
新中央埠頭の空地から姿を消してからは、今日までお目にかかっていない。
新中央埠頭で見つけたオオアカバナよりも枝ぶりが大きくて花の数も多い。
今が盛りであるとばかりに美しく咲いている。

草丈は1メートル近くある。
枝が発達していて花の数が多いので艶がある。
オオアカバナは、紅紫色が鮮やかで、図鑑のアカバナ属の中ではいちばん艶やかに見える。

アカバナよりもひと回り大きい花は、花弁が8枚あるように見える。
だがオオアカバナの花弁の数はアカバナと同じで4枚。
オオアカバナの花弁の先端は2浅裂するが、ここの個体は4枚の花弁が密に接していて、2浅裂の切れ込みがちょっと深めなので、一見すると花弁が8枚に見える。

白い柱頭が4裂して裂片が反り返っているのがアカバナとの相違点。
アカバナの柱頭はこん棒状である。
これが見分け方の一番のポイントかもしれない。


【花弁の数がアカバナよりも多く見える。】


【柱頭が4つに分かれている。】


【オオアカバナの葉。】


上の写真のようにオオアカバナの葉は長楕円形。
先が鋭形で縁にとがった鋸歯がある。
基部は円形または浅心形で茎を抱き、葉柄はない。
私の写真がまずくて不鮮明だが、葉の両面には長い軟毛が生えている。
葉は茎の下部では対生し、上部では互生している。

下の写真のように、花の基部に細長く付いて、ちょっと赤く膨らんでいる花柄状のものは、のちに果実になる子房。
この子房の下に細く短い花柄が付いている。
この子房の付き方はアカバナと同一であるが、オオアカバナの子房のほうが長めである。
花が大きい分、子房も長いのだろう。

オオアカバナは横に走る細長い地下茎を持っていて、群生することが多い。
この側溝に隣接する住宅の住人が、側溝の掃除を怠ってくれれば、ここはオオアカバナの群生地になるかもしれない。
 
そうなることを期待して、愛犬の散歩を楽しんでいる。


【直立している細長い円柱形のものが果実。】


【茎からたくさんの枝を出している。】


【どぶに落ちても根のある奴は・・・・】

2018/09/01

側溝の底からグレーチング越しに伸びていたアカバナ

【アカバナの花。】


事務所の通路上にある側溝からアカバナが伸びていた。
めずらしい。
ここでアカバナを見るのは初めてである。
どこからやってきたのか、可憐なピンク色の花を咲かせている。

アカバナといえば、青森市の新中央埠頭で見つけたオオアカバナの花が思い浮かぶ。
環境省レッドデータ絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定されているあのオオアカバナである。

オオアカバナの名は、大型のアカバナであることに由るという。
アカバナは、オオアカバナと違って絶滅危惧種ではない。
山野の湿地を好む山野草である。

そのアカバナが側溝の底で生育しているのは、私が側溝の掃除を怠っているからだ。
長年に渡って溜まった汚泥に根をおろしているアカバナ。
私の怠慢のおかげで可憐な花を咲かせている。

きのう見つけた松原公園のツリガネニンジンも、今日見に行ったら無くなっていた。
摘まれてしまうのが、きれいな花の運命。
野草ファンの楽しみも、早々摘まれてしまった。

だが、このアカバナは摘まれてしまうことはない。
大家さんにお借りしているとはいえ、ここは私の「領地」なのだから。
この可憐なアカバナを摘むものは誰もいない。


【側溝から、グレーチングの隙間を潜って花を咲かせている。】


このアカバナの、側溝の底からの草丈は70センチぐらい。
上の写真では分かりにくいが、茎に細かい毛が生えている。
花の基部の花柄は、実は花柄ではなく長い子房であるという。
長い子房の下に短い花柄がある。
【※「花柄(かへい)」とは、花序や果実を支えるための茎。「花梗(かこう)」ともいう。】
【※「子房(しぼう)」とは、被子植物の雌しべの下部にある、膨らんで袋のようになっている部分。中には胚珠(はいしゅ)があって、そこで受精が行われ、種子ができると熟して果実になる。】

花の中央から飛び出している白い突出物は、柱頭(めしべの頂部)。
上の写真で、上に突き出している細長い緑色の棒状のものが蒴果という果実。
この果実が、秋の中頃に成熟して開裂する。
【「蒴果(さくか)とは、果実(裂果)の一種。二枚以上の心皮からなる子房で、成熟すると果皮が乾燥して、縦に開裂して種子を出す。】

開裂して種子が四方に散り、栄養分の豊富な側溝はアカバナの楽園になるであろう。
側溝でアカバナを育てている老人は、大家さんの心配の種になるであろう。

下の写真を見ればわかるが、葉には荒い鋸歯がある。
葉のつき方が、対生であるか互生であるかは、この写真では判然としない。

しかしこの野草は、誰にも摘まれることなく枯れるまでここに居続ける。
葉のつき方や果実が熟す様子を、これからじっくりと見ることができる。
摘まれることのない「楽しみ」である。

なお「アカバナ」という名は、秋になって茎や葉が紅紫色に変わることに由るという。
この茎や葉の変化も、「楽しみ」のひとつである。


【蕾も次々と。】