無雪期の高地場山登頂と、山腹のすばらしいヒバ林

【使用した地形図。】


有雪期や無雪期に、「滝沢山地」にある名前のない山、道のない山にちょくちょく登っている。
今日は、「滝沢山地」では貴重な名前のある山に登った。
去年の春の残雪期にスキーで登った高地場山(たかじばやま:標高459m)である。

高地場山は、名前はあるが道(登山道)のない山。
無雪期に「滝沢山地」の、名前があって道のない山に登るのは、葉抜橋山(はぬきばしやま:標高615m)以来2度めである。

「滝沢山地」で、名前がなくて道のない山で好きな山は、なんと言っても大毛無山南尾根に鎮座する734峰
赤沢から平沢への峰越ハイキングは、今でも忘れられない「滝沢山地」のパノラマコースであった。

それは、さておき。
「滝沢山地」はほとんどが国有林で、自然公園ではないので遊歩道は備わっていない。
道と呼べるものは、営林署が管理している林道ぐらいである。
その林道も、現役の伐採道だったり伐採道が廃道になったりで、遊歩道には向かないものばかり。

東北森林管理局では、『「レクリエーションの森」「スキー場」「野営場」「登山道」「その他遊歩道」「休憩小屋等の施設が設置されている箇所」に入林する場合は、事前の入林届の提出は不要です。』とサイトに注意事項としてアップしている。

私の入山は、「入林届の提出は不要です。」という枠からはちょっと外れていると思う。
だが風変わりな森林愛好者として、かんべんしてやってください。

さて、平沢林道沿いの平沢には、一ヶ所だけコンクリート製の立派な橋がかかっている。
大型のダンプカーでも渡れそうな橋だが、橋の両端に自動車道路はない。
特に橋の山側は、下の写真のように、深いヤブになっている。

橋を渡って、すぐ右手のヤブの中へ入り、少し進んでから左手に曲がる。


【山の中に立派なコンクリート橋。】


すると、下の写真のような踏跡がついている。
かつての林道跡のようなところに、かすかについている踏跡をたどって、ゆるい傾斜を登る。


【踏跡。】


踏跡は、ミズが群生している原っぱを横切って上へとのびている。
ここのミズは、茎が細め。
探すと、手頃に太いものもあるので、帰りにいただくことにしよう。


【ミズ(ウワバミソウ)の群生地。】


林道跡(伐採道の廃道)は、ゆるい傾斜地を登ったり下ったりして続いている。
草薮に覆われているので、ちょっと分かりにくい。
去年の春の残雪時には、明確だったのだが、すっかり草薮に隠れている箇所もある。
残雪時の記憶をたよりに進む。


【伐採道の廃道を進む。】


【カール状の谷。】


しばらく歩くと、尾根に囲まれた小さなカール状の谷にたどり着く。
見覚えのある谷である。
キノコのありそうな場所だなあと、スキーで通りながら思ったのだったが、この時期に実際こうして来てみたら、太い風倒木が見当たらない。
キノコの姿もない。

谷から、傾斜のゆるい場所を選んで尾根に上がる。
この尾根が高地場山に続いている尾根である。
地形図をにらみながら、尾根のトップを歩けば、迷うことなく高地場山へ着くはずである。


【谷から上がって、尾根に出る。】


【尾根の林床にミヤマシキミ。】


上の写真は、尾根の林床で見かけたミヤマシキミ。
ごらんの通りの低木。
最初ヒメアオキかなと思ったが、ヒメアオキと違って葉が全縁で厚みがある。
ミヤマシキミは有毒で、特に果実の毒性が強いと言われている。

クマもカモシカもこの実を食べないので、ミヤマシキミの実は、雪に埋もれるまで鮮やかな赤い色を放っている。
光沢のある深緑の葉に、丸くて赤い実の組み合わせが美しい。


【火焔ブナ。】


上の写真の、特徴的なブナの木は、高地場山の山頂尾根の南端に立っている。
縄文土器の火焔型土器に雰囲気が似ているので「火焔ブナ」と名付けた。
この「火焔ブナ」まで、尾根ルートはやや急登を強いられる。
しばらく山登りから遠ざかっていたので、ちょっとしんどかった。


【高地場山の山頂広場。】


「火焔ブナ」から真北に、ほとんど平らな尾根を進むと小高い丘のような山頂が姿を現す。
山頂広場に到着である。
平沢のコンクリート橋から1時間10分ほどかかった。

山頂広場は、ヤブが空いていて開けた感じである。
ただ樹木にさえぎられて、山頂からの見晴らしはきかない。
周囲を歩いて三角点を探したが、見当たらなかった。

見晴らしはきかなくても気分のいい広場である。
山頂広場で小休止してから先へ進む。
右手樹間から647峰が見えた。
その奥に、去年の春の初めにスキーで登った681.3峰が鎮座している
このふたつの山に名前がないのは寂しいことだ。
青森市の滝沢の集落から大きく見える山なのに。

山頂広場から5分ほど尾根を進んだら、ヤブが深くなった。
2メートルぐらいあるネマガリダケのヤブである。

ここまでのルートは膝下前後(45cm~60cm)程度の快適なヤブだったのに。
ネマガリダケのヤブコギを100mぐらい続けたが、先が見えないので断念した。

山頂に向けての登り坂のヤブコギなら挑戦したが、平らな尾根のヤブコギは苦手である。
方角を見失う可能性が大きい。
地形図を見ると、681.3峰へ近づくに従って、平坦な尾根が太くなっている。
迷いやすい地形である。

681.3峰へ近づきたかったが、ここから先は雪山コース。
そう思って引き返すことにした。


【山頂付近の樹間から秀麗な647峰を眺める。】

【三連ヒバ。】


山頂からの帰り道に、尾根の東側の中腹で素晴らしいヒバ林を見つけた。
上の写真は、三本のヒバが根本付近で融合しているもの。
三本の融合木を見るのは初めてである。
「火焔ブナ」に引き続き、「三連ヒバ」と名付けた。

その下のゆるい傾斜地に、ヒバ林が広がっている。
強い風が吹かない山域なのか、ヒバはまっすぐ上に向かってのびている。
まるで人工の育成林みたいなヒバの姿。

こんなすばらしいヒバ林に出会えるなんて、高地場山も捨てたものではない。
遠くから見ても目立たない山なのに、なぜこの山に名前がついているのだろうと思っていたのだ。

案外、この山の名前の由来は、このすばらしいヒバ林にあるのかもしれない。
「タカヒバヤマ」が訛って「タカジバヤマ」になったとか。
「タカヒバ」は「高貴なヒバ」の意だったり。
などとヒバの木に囲まれて空想を楽しんだ。

先日散策した下折紙沢のヒバ林と比べると、ここのヒバの方が端正である。
馬に例えるなら、サラブレッドのようにスマート。
いっぽう下折紙沢のヒバは、農耕馬のようにガッシリと太い。

きっと育っている環境のせいなのだろう。
山の形が様々であるのと同様に、森の形も様々であるのだ。

私は農耕馬的なヒバが好きだが、こうして端正な森のなかにいると、こんな森にも惹かれてしまう。

心動かされる気持ちのいい場所なので、ここで大休止。
去りがたいヒバの森だった。


【広いヒバ林。】


【清々しいヒバ林。】


【クサギの結実。】


上の写真は、帰り道に見かけたクサギの木。
花が咲いているように見えるが、赤い花びらのように見えるのは萼。
萼の真ん中にクサギの黒い実が見える。


【ミズをいただく。】


帰りにミズを少々いただいた。
家で油炒めにして食べたら、柔らかくて粘りがあって美味しかった。

下の写真は、夕方の愛犬の散歩で青い森セントラルパークに行ったときに撮ったもの。
昼に赤いヒバ林を眺め、夕暮れに赤い夕焼けを眺め。
赤赤で血のめぐりが良くなりそう。
山歩きの心地よい疲れが、全身を巡っている。


【おまけ。青い森セントラルパークで見た夕焼け。】

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