雑談散歩

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夢の中の白い犬

【夢の中の、夜の街。】


ごそごそという音で目が覚めた。
部屋の中は、まだ暗い。

ベッドの脇で、大きな白い犬が寝室のドアの方へ去ろうとしていた。

「おい、どこへ行く?」
私は、白い犬に話しかけた。
白い犬は、身体の向きを変えずに首を回して私の方をじっと見た。
暗い部屋のなかでも、犬の大きな黒い瞳がはっきりとよく見えた。

そうして私は眠りから覚めた。
だが、この夢の中の白い犬の出現で、夢の中へ目覚めたのかも知れない。

またしても部屋を出て行こうとする犬を呼び止めると、犬はまた、首だけを回して振り返り、何か物言いたげに私を見つめた。
動物の多くは、何か物言いたげな目で、人間をじっと見るときがある。

そういう目で、白い犬が私を見つめた。
夢といっても、犬は言葉をしゃべらない。
賢そうな印象の黒い瞳で、静かに私を見つめるだけ。

そして時々、これが夢の始まりになる。

夢の中の白い犬は、「さあ、見なさい」とでも言うように、寝室のドアの向こうへ出て行く。
私は犬の後を追い、夢の世界に落ちる。
これが夢の始まり。
奇妙でリアルな物語の街の、事件に巻き込まれていく。

この夢の中では、白い犬に従うのが私の行動の方法なのだ。
街の事件は、矮小猥雑で、誇大で、しかも現実以上に愛情にあふれていた。

騙りと裏切りと争いと慈愛の渦巻く光景を見ているのは、私なのか、夢の中の白い犬なのか・・・・・。

もしかしたら、白い犬の夢の中に、私が時々出演していたのかもしれない。

夢を見せる白い犬の夢。
さまざまな夢が重なるから、夢の世界は奇妙なのだ。

物語の街は事件で溢れている。
ネオンサインのようにごった返し。
その事件が、夢を脚色し。
その夢が事件を脚色し。

まるで雑談のような、ごった返しの街の通りを、夢の中の白い犬が私を連れて散歩する。
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