アカメガシとベニカナメモチとレッドロビン
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| 「レッドロビン」の可憐な白い花。 |
幹が樫の木の雰囲気を持っていて、新芽や若葉が鮮やかに赤くなるこの樹の名前を「アカメガシ」と覚えていた。
時々通る散歩コースで、その「アカメガシ」の生垣が、可愛い白い花を咲かせていた。
にぎやかな散房花序(さんぼうかじょ)の五弁花が、朝の光に輝いている。
花のことをインターネットで調べようと「アカメガシ」で検索したところ、ヒットするのは、ほとんど「アカメガシワ」だった。
「アカメガシ」という樹は存在しないのか、あるいは間違って覚えていたのかと気を揉んだ。
詳しく調べてみると、確かに「アカメガシ」という呼び名はあるものの、あまり一般的ではない通称で、標準名は「ベニカナメモチ」とされている。
私がどうして「アカメガシ」を知ったかというと、中部地方で暮らしていた若い頃に、エクステリアデザイン事務所でアルバイトをしていたことがあったからである。
その会社の社長と、方々の庭を見て歩き、樹の名前や性質を教えられていた。
「アカメガシ」という名前も、その時覚えたもののひとつだった。
造園業を営む家の息子だった社長は、「ベニカナメモチ」という名称も口にしていたはずである。
ただ、当時の私には、「カナメモチ」という樹そのものが馴染みのないもので、強く印象には残らなかった。
当時、樹木の知識が乏しかった私は、その幹の佇まいがなんとなく樫の木に似ているように思え、「樫に似ていて、芽が赤いからアカメガシなのだ」と自分の中で勝手に納得してしまっていた。
そのため、「アカメガシ」という呼び名だけが記憶に残ったのだと思われる。
「カナメモチ」は、日本では本州(福井県・静岡県以西)、四国、九州の温暖な地域に分布しているという。
北国で生まれ育った私にとっては、見たことも聞いたこともない種類であった。
さて、「ベニカナメモチ(通称アカメガシ)」も寒い土地はあまり得意ではないとされる。
青森県で自生している例は無いようであるし、環境によっては栽培も容易ではないのかもしれない。
そう考えると、私が見かけている生垣の樹は、別の種類である可能性もある。
そこでさらに調べてみると、「カナメモチ」と「オオカナメモチ」をもとにした園芸品種があり、日本全国で広く植栽されているという。
それが「セイヨウベニカナメモチ(レッドロビン)」である。
日本では「レッドロビン」という呼び名の方が一般的で、覚えやすさもあって広く定着しているという。
「ベニカナメモチ」と「レッドロビン」はよく似ており、新芽や若葉が鮮やかに赤い姿も共通している。
葉の鋸歯の出方などに違いがあるとされるが、見分けは必ずしも容易ではない。
鋸歯とは葉の縁にあるギザギザのこと。
今日撮った写真の葉を見ると、鋸歯はあまり目立たない。
ほとんど無いに等しい。
そのため、断定はできないものの、私が散歩で見かけている生垣の樹は「レッドロビン」である可能性が高いと思われる。
私がエクステリアデザイン事務所で働いていたのは二十代の頃で、今から五十年ほど前のことである。
半世紀を経て、ようやく自分の記憶の由来に思い至った。
「アカメガシ」という呼び名は決して間違いではなかったが、現在ではあまり用いられない言い方であった。
それでも、その名前が長く記憶に残っていたのは、当時の私にとって理解しやすい呼び名だったからだろう。
名前や知識というものは、必ずしも正確さだけで定着するのではなく、記憶に残りやすい形で根を下ろすものなのかもしれない。
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| 紅葉ではなく、春に若葉が赤くなる。 |
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| こちらは、まだ蕾。 |
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| 「レッドロビン」の生垣。 |



